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えだまめ栽培におけるダイズシストセンチュウの被害予測と輪作による線虫密度の変動
岩手県立農業試験場・技術部・環境部
[部会名] 総合農業
[分科会名]畑作物
[分類] (3)
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[成果の内容]
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技術・情報の内容及び特徴
えだまめ栽培におけるダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)について、
被害予測及び輪作による線虫密度の変動等を明らかにした。
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えだまめ作付前の土壌中蔵卵シスト数(風乾土壌100g中)(以下、シスト密度と略記)と
完全莢数、完全莢収量、地上部重、一莢重とは高い負の相関関係(線形一次回帰に
おいて)が認められた。主茎節数、葉色(SPAD値)との相関関係は認められない
(表1)。
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作付前シスト密度(x)とえだまめ収量(Y)(被害なしを100とした完全莢収量比%)との
間に次式のような線形一次の相関関係が認められた
(図1)。
Y=100(±12.5)-29.54(±8.74)logx (r=-0.79, 信頼限界95%)
この式をもとに、作付前シスト密度を調査することにより、概括的にえだまめの
減収程度の推定が可能である。シスト密度3個以下では10%以下、
シスト密度10個以下では20〜50%、シスト密度102個以上では
40〜90%の減収となることが推定される。
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野菜類の作付けにより、シスト密度の低下と土壌養分の富化をはかった場合、その後
1作はダイズシストセンチュウ被害がきわめて少ないが、シスト密度は急速に増加し、
その後えだまめを連作すると大きな被害を受けるおそれがある
(表1)。
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ダイズシストセンチュウ抵抗性を有するスズカリは作付けによりシスト密度が高まる。
また高度の抵抗性を有するスズヒメについては、シスト密度の上昇はごく
緩やかである。しかし、その後ダイズシストセンチュウ抵抗性を有しないえだまめ
品種を栽培すると被害は連作と同程度に発生する。
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赤クローバーの作付け、すき込みによってシスト密度が低下するが、えだまめと
赤クローバーの輪作による被害軽減はわずかしか認められなかった。
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技術・情報の適用効果
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作付前の土壌中シスト密度を計測することによって、被害を推定でき、圃場選択や
対応策の検討が可能となる。
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えだまめを含めた輪作体系を策定する際の参考となる。
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適用の範囲
寒冷地のえだまめ栽培地帯
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普及指導上の留意点
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えだまめ品種はダイズシストセンチュウ抵抗性を有しないユウヅルを用いた。また
栽培は露地・無マルチとした。
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供試した野菜類等はレタス、だいこん、にんにく、スイートコーン及び落花生である。
[その他の特記事項]
研究課題名:(1)県中北部における高収益畑作展開のための土地利用方式の確立
(2)畑作物の線虫防除体系の確立
予算区分 :県単
研究期間 :(1)昭和62年〜平成2年 (2)昭和63年〜平成3年
発表論文等:未発表