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東北小麦品種のグルテニンサブユニットによる製パン適性の評価


東北農業試験場・作物開発部・麦育種研究室
[部会名] 総合農業
[分科会名]冬作物
[分類]  (3)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    日本の小麦品種の多くは軟質タイプに属し主に麺用として利用されているが、地場の 中小実需者よりパン用小麦品種開発が要望されている。SDS-電気泳動により小麦の 種子タンパク質グルテニンは、約20種類のサブユニットに分けられ、各々の サブユニットの製パン適性への寄与度は数値化されている (表1)。しかし、日本ではまだこの方法による 製パン適性の評価はなされていない。そこで、電気泳動法を系統の選抜に 利用するという観点から方法の改良を試みた。また、本法を用いて東北地方の 品種系統について数値化を行い、グルテニンサブユニットからみた製パン適性の 評価を行った。
    その結果、図1に示すようにサンプル量の少量化、 ゲルサイズの縮小化、タンパク抽出時間及び泳動時間の短縮化が可能となった。 すなわち、短時間に多数のサンプルを処理する方法が確立した。また、東北地方の 品種・系統のグルテニンサブユニットからみた製パン適性寄与度は最高が8点で、 カナダなどのパン適性の高い品種には及ばなかった (表2)。
  2. 技術・情報の適用効果
    1. 国内品種及び導入品種の製パン性に関する遺伝子源の評価が可能である。
    2. 電気泳動に利用する試料は5mg(1粒の1/3程度)でよいので、育種の現場では、半粒法 によりグルテニンサブユニットをベースにした系統の選抜が可能である。
    3. 日本に適したパン品種が育成される。
  3. 適用の範囲
    改良した電気泳動法はいずれの地域及び品種・系統でも適用できるが、製パン適性への 寄与度は東北地域の品種・系統についてのみ数量化されている。そのため、 他地域の品種・系統については本法により製パン適性への寄与度を数値化しなければ ならない。
  4. 普及指導上の留意点
    各サブユニットを判定するために、基準となる品種を同時に泳動する必要がある。


[その他の特記事項]
研究課題名:小麦優良品種の育成
予算区分 :経常
研究期間 :昭和63年−平成元年
発表論文等:中村俊樹ら1989.グルテニンサブユニットからみた東北小麦品種の製パン適性
      日作紀 58:269-270.