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肥効調節型肥料を用いた水稲省力施肥技術


宮城県農業センター、古川農業試験場
[部会名] 総合農業
[分科会名]生産環境
[分類]  (2)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    1. 次の肥効調節型肥料の利用で、慣行施肥法同等の収量が期待でき、省力施肥が可能。 溶出がS型の肥料は中・後期に生育が凋落する地帯に適する。
    2. 施用する肥料と施肥法(表1)
      1. 追肥前提側条施肥用肥料
        1)被覆塩加燐安(CK484M, 70日タイプ) 0.5Kg/a+減数分裂期窒素 0.2Kg/a
      2. 側条1回施肥用肥料
        1)被覆尿素(LP 100日タイプ、緩効性窒素割合70%)
        2)被覆尿素(LPS 100日タイプ、緩効性窒素割合60%)
        3)被覆尿素被覆塩加燐安(UCK555LM 100日タイプ、緩効性窒素割合70%)
      3. 全層1回施肥用肥料
        1)被覆尿素被覆塩加燐安(UCK555LM 100日タイプ、緩効性窒素割合70%)
    3. 全層施肥法及び側条施肥法の1回施肥用肥料の基肥窒素量は、普通化成を用いた 基肥+追肥合計量の80〜90%を目安にする。
    4. 肥効調節型肥料の初期生育経過は側条施肥では慣行施肥並からやや劣る程度、 全層施肥では草丈、茎数ともに慣行施肥より明らかに少なく推移するが、有効茎歩合が 高くなり慣行施肥法並の穂数及び収量は確保できる。
      UCK555LMの側条施肥区の茎数は多く推移することもあるが、有効茎歩合が高く 穂数の確保が容易となる (図1図2図3)。
    5. 肥料成分の溶出も地温積算値と高い相関関係を示し、年次間差は比較的小さく、 S型以外は2次の回帰式で近似できる。S型は溶出がシグモイド曲線を示し、 生育初期に少なく中・後期に溶出が多くなる (表2表3)。
  2. 技術・情報の適用効果
    追肥を施用する労力、栄養診断技術への依存等が軽減される。
  3. 適用の範囲
    県下一円(平坦地帯)
  4. 普及指導上の留意点
    1. 全窒素量に占める緩効性窒素割合が高すぎると初期生育が大きく遅れるから、LP100日 タイプで70%、LPS100日タイプでは60%程度が適当である。
    2. LPは上記の配合割合になるように、苦土安2号とPK化成で自家配合するが、 機械適合性等実用上は問題が無い。既成の配合肥料も市販されている。
    3. CK484Mは70日タイプであるから減数分裂期追肥を前提とするが、その他の肥料は 穂肥効果が小さいし、登熟期の窒素が過剰になる恐れがあるから できるだけ追肥はしない。


[その他の特記事項]
研究課題名:(農業センター) 低コスト良質高位安定生産施肥技術確立試験
             1)省力施肥技術体系の確立(側条、全層施肥法)
      (古川農業試験場) 側条施肥による窒素の全量基肥施肥法
予算区分 :県単
研究期間 :(農業センター)昭和63年〜平成2年 (古川農試) 平成2〜3年
発表論文等:平成3年度普及に移す技術