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三陸沿岸地帯に侵入する霧を伴うやませの局地気象特性


東北農業試験場・地域基盤部・気象特性研
[部会名] やませ環境
[分科会名]
[分類]  (3)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    1. 霧を伴うやませに含まれる霧水量とその時の視程は霧粒の半径をパラメータとする 指数関数で表されるが、点線より上の領域は発現し難い。同じ霧水量でも霧粒の 平均粒径が小さくなると、視程はより減少する(図1 参照)。日射率と霧水量は強いやませの場合、I'=0.00343*EXP(3.566W)/W、及び 視程との関係はI'=EXP(-3.9Z/V)で表される。上式から霧層の厚さ(霧層の上に下層雲 のある場合はその層厚を含めた評価)が推定できる。ここでI':可能日射量に対する 実日射量、W:霧水量(g/立方メートル)、Z:霧の層厚(m)、V:視程(m)である。
    2. 霧を伴うやませの風速は風向によって若干異なるが、1〜3m/sと弱風である (図2参照)。北東から侵入する霧は移流霧が多く、 気塊は低温で気温逆転層を形成するが、日射の減少は少ない。他方、南東から侵入する 霧は前線霧が多く、温度は高いが、霧層の上に下層雲を伴うために日射は激減する。
    3. 軽米−種市間に侵入する霧を伴うやませの主要ルートは 図3のとおりであり、その頻度は北西から北東及び 南東から南が高い。霧は谷沿いに内陸部まで侵入するが、山を越える過程では消滅が 起こる。
  2. 技術・情報の適用効果
    やませの局地気象特性から作物に対する霧の影響や低音・低日射の影響評価に役立つ 情報が得られる。やませの規模や霧の厚さ、日射強度が実験式からおよそ推定できる。
  3. 適用の範囲
    上記の日射率と霧水量及び日射率と視程の実験式、あるいは霧の侵入経路及び風速域 等は三陸沿岸地帯の情報である。
  4. 普及指導上の留意点
    沿岸部と内陸部、あるいは地形によってやませの状況が異なる。


[その他の特記事項]
研究課題名:やませ等局地気象の成立課程の解明と予測手法の開発
予算区分 :特別研究
研究期間 :昭和63年〜平成2年
発表論文等:1991年度日本農業気象学会全国大会