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ナシの新病害・ヒポキシロン幹腐病の発生
福島県果樹試験場 病理昆虫部
[部会名] 果樹
[分科会名]
[分類] (1)
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[成果の内容]
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技術・情報の内容及び特徴
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福島では、昭和57年頃から、当時病原不明であったナシ萎縮病と見られる病害発生して、
その被害が表面化した。そこで、発生条件や病原解明などの試験に着手たところ、
従来ナシ萎縮病に包含された症状は2つに分けられることが判明し、病原菌も異なることが
明らかとなった。
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発生頻度が圧倒的多いものをA型、少ないものをB型とした。A型とB型の病徴の区別点は、
A型では葉のクロロシス、小葉、枝梢内部のネクロシスであり、B型では舟形状になる
葉巻および縮葉である。
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A型の病原菌は、Hypoxylon serpens (Per.Fr.) Kicky で、B型の病原菌は、キコブタケ
Phellinus igniarius (Lex Fig.) Quel と同定された。両者とも糸状菌である。
従来は、A型およびB型の病名を共にナシ萎縮病としていたが、新たにA型に独立した病名を
付けることにし、日本植物病理学会(1990)においてヒポロキシロン幹腐病を提案した。
B型はそのまま萎縮病とした。
表1 ナシヒポキシロン幹腐病とナシ萎縮病の部位別病徴の違い
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技術・情報の適用効果
本病の病徴と病原が明らかにされた。したがって、本病の病徴による診断が可能とな今後の防除対策が
容易に実施できる。また、本病の発生による樹の枯損を減らすことにより生産が安定する。
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適用の範囲
全国のナシ栽培地帯全域
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普及指導上の留意点
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ヒポキシロン幹腐病および萎縮病は、いずれも木材腐朽菌(糸状菌)である。従って機械による
樹体の損傷や高接ぎ更新時などの大きな傷口は、菌の侵入門戸となるので、傷口を保護するような
対策をとる。また、樹体に大きな傷を作らないことが、本病の基本的な予防策となる。
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症状が軽い場合には、腐朽した部分を削り取り、トップジンMペーストを塗るとよい。
[その他の特記事項]
研究課題名:ナシ萎縮病の病原解明と防除技術確立試験
予算区分 :県単
研究期間 :昭和58年〜平成元年
発表論文等:平成2年度日本植物病理学会大会
普及にうつす成果 第26号(福島県農林水産技術会議刊)