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灰色低地土における田畑輪換のための耕盤破壊の効果


福島県農業試験場 農芸化学部
[部会名] 地域水田農業
[分科会名]
[分類]  (1)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    粘質で有機物の少ない灰色底地上(LiC)において、耕盤破壊を目的とし深耕した 場合の、作物の生育や土壌の理化学性に及ぼす影響を明らかにした。
    1. 大豆・野菜及び水稲の収量
      深耕(プラウ+ロータリー30cm耕深)初年目の大豆は普通耕(ロータリー15cm耕深)より 減収したが、2作目の水稲、3作目の大豆、キャベツは増収した。深耕初年目は、下層の脊薄な 土壌の混入による肥沃土の低下がおこるため、窒素供給力の高い有機物(青刈麦等)の 施用や、施肥で対応する必要がある。 (図−1)
    2. 畑作時の土壌水分の動き
      普通耕の作土では乾湿の変動が大きいが、深耕ではその変動巾が小さく、含水比は高めに 経過した。
      降雨時における重力水の排除時間は、普通耕で約4時間、深耕で約12時間、下層では21時間であった。 (図−23)
    3. 水田輪換時の用水量及び減水深への影響
      日減水深は深耕で普通耕より2〜3mm増加した。このため、稲作期間の潅漑水量は、 深耕で9%増加した。 (表−1、2)
    4. 土壌物理性の変化
      深耕によって下層の構造が発達し、孔も増加した。このため、容積量の減少と孔隙量飽和透水係数が 増加し、透水性が向上した。 (表−3)
  2. 技術・情報の適用効果
    畑2作水稲1作の輪換体系において、水田の耕盤を破壊し深耕することは、土壌の乾湿の 変動を小さくし、土壌水分の供給と根域の拡大によって収量が向上する。
    水田復元時には透水性が改善され、用水量はやや多くなるものの、水稲の生育や収量が増加する。
  3. 適用の範囲
    福島県全域の下層が緻密な灰色底地上
  4. 普及指導上の留意点
    深耕初年目は下層の脊薄な土壌の混入による肥沃土の低下がおこるため、これを補填する 土壌改良資材の投入や、窒素含有率の高い有機物の施用に努める必要がある。
    施肥量の多い野菜等の作付け後における水稲作では、過繁茂による倒伏の危険性が高いため、 窒素の減肥や間断灌漑と強めの中干し等によって、高品質・安定多収をはかる必要がある。


[その他の特記事項]
研究課題名:類型別土壌の耕盤管理技術の確立
予算区分 :国庫助成
研究期間 :昭和63年〜平成2年
発表論文等:なし