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リンゴ幼果における斑点落葉病の発生とその感染経路
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[要約]
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リンゴ幼果に発生した斑点症状は、斑点落葉病菌が落花期以降に
花器残渣やその溢出物が付着しているがく片部で増殖し、
がくあ部が上向き状態の時期から雨媒伝染し発生したものである。
秋田県果樹試験場鹿角分場
[連絡先] 0186-25-3231
[部会名] 果樹
[専門] 作物病害
[対象] 果樹類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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リンゴ斑点落葉病は、発生すると経済的影響が大きく、また発生期間も長く防除上
重要な病害である。1996年に、秋田県下のリンゴ幼果に斑点症状が発生し
問題となった。発病果より、Alternaria属菌が高率に分離されたが、
りんごの幼果期は斑点落葉病の発生が極めて少ない時期であるので
その発生原因を解明する。
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[成果の内容・特徴]
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調査地での発病果率は、「王林」10.3〜15.2%、「ふじ」0.7〜7.6%であり、
「王林」での発病程度が高かった。症状は、幼果のがくあ部を中心に
小型の褐色〜黒褐色の斑点が1〜数個あるいは数十個形成され、
これらの果実の周辺葉に斑点落葉病と思われる斑点が認められることが多く、
いずれからもAlternaria属菌が高率に分離された。
また、これらの果実のがく片付近や花器残渣は黒褐色化していることが多く、
検鏡により多数のAlternaria属菌分生胞子の形成が認められた。
発生園内では、健全果でもがく片部が
黒褐色あるいは黒い煤状になっているものがあり、
これらにもAlternaria属菌分生胞子の形成が認められた
(表1、表2)。
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幼果期に発病した果実は、収穫期にはその斑点部がサビ状に拡大するか、
黒褐色の斑点状となり、商品価値が低下する。
発生品種は、「王林」、「ふじ」の他、
「千秋」、「スターキング・デリシャス」などでも認められた。
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発病果の斑点部及びがく片、健全果のがく片から
Alternaria属菌が高率に分離された。
(表2)
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一部の分離菌について病原性を検定した結果、
幼果と葉にそれぞれ典型的な斑点落葉病の病斑を形成したことから、
これらは斑点落葉病菌であると考えられる。
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[成果の活用面・留意点]
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落花期以降の防除は、斑点落葉病に有効な薬剤を選択する。
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斑点症状の著しい果実は、商品価値が低下するので摘果する。
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幼果のがくあ部での発生がある場合は、多発の可能性があるので
周辺葉での発生とその後の発生経過をよく観察する。
[その他]
研究課題名:リンゴ黒星病を主体とした生育期前半の防除体系改善試験
予算区分 :県単
研究期間 :平成9年度(平成8年〜9年)
発表論文等:リンゴ幼果に発生した斑点落葉病について、
北日本病虫研報、第48号、1997。