研究所トップ研究成果情報平成12年度

酒造好適米品種「ぎんおとめ」の生育・栄養診断基準と栽培法


[要約]
早生の酒造好適米品種「ぎんおとめ」の心白発現率を低下させず、白米中粗タンパク含有率を高めないための目標籾数を21〜29千粒/uと設定し、栽培指標として、収量構成要素、施肥法、栽植密度、刈取り適期を示した。また、追肥の要否判定のための栄養診断基準を策定した。
岩手県農業研究センター・県北農業研究所・営農技術研究室
                    やませ利用研究室
            農産部・    水田作研究室
[連絡先] 0195-47-1070
         〃
      0197-68-4412
[部会名] 水稲
[専門]  栽培
[対象]  稲類
[分類]  普及

[背景・ねらい]
「ぎんおとめ」は岩手県中北部で栽培可能な、早生で酒造好適米として優れた特性を持った品種である。この品種の心白の発現率や白米中粗タンパク含有率等の品質安定を重視した栽培指標を示し、幼穂形成期における栄養診断基準を策定した。

[成果の内容・特徴]
  1. 収量構成要素 
      70%搗精白米中粗タンパク含有率や心白の発現率等を考慮した適性なu当籾数の範囲は、21〜29千粒/uである。この時の稈長は66〜75cm、穂数は300〜400本/u、一穂籾数は65〜85粒、登熟歩合は85%以上、千粒重(2.1o調整)は26〜28gとなり、2.1o調整精玄米収量は480〜540s/10a程度が期待できる。(図123
  2. 栄養診断基準 
      栄養診断基準値および簡易栄養診断値に基づいて下記によって、追肥の要否を判定する。なお、追肥窒素量は2s/10aを上限とする(図4)。
      基準値未満の場合:u当籾数確保のため、幼穂形成期追肥を実施する。
      基準値以内の場合:減数分裂期に追肥を実施する。
      基準値以上の場合:追肥は行わない。
  3. 醸造適性・品質・収量安定化のための栽培法 
      (1)u当籾数が29千粒/uを越えるような過剰生育では、白米中粗タンパク含有率も上昇する。u当籾数が適正範囲となる条件では減数分裂期追肥を行っても、粗タンパク含有率は適正範囲内となる。多肥や幼穂形成期追肥は籾数が多くなり、心白発現率が低下して外観品質が落ちるため、基肥窒素量は6s/10a程度の標肥、追肥は減数分裂期重点とし、成分で2s/10aを上限とする(図123)。
      (2)適正u当籾数を安定して確保するため、栽植密度は22株/u程度を確保する。
      (3)刈取り時期は出穂後積算平均気温で1000〜1100℃とし、刈り遅れにならないよう黄化籾割合80%程度を目安に刈り取る(図5)。
                                                                                                                    

[成果の活用面・留意点]
  1. 「ぎんおとめ」は千粒重が大きいため中苗散播育苗の場合の播種量は乾籾で140g/箱程度とする。また、移植時には3〜5本/株程度となるように掻き取り量を調整する。
  2. ぎんおとめの葉色はたかねみのり等に比較して淡いので、目視のみの判断で追肥を行わないこと。  
  3. 生籾の火力乾燥は、胴割れ粒を増加させないよう、一般飯用米の場合よりも送風温度をやや下げて行うこと。

[その他]
研究課題名:奨励品種決定調査(予備調査、本調査、現地調査)
     :岩手酒52号の栽培特性
     :岩手酒52号の生育診断指標
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(平成9〜12年)
研究担当者:高橋好範、和野重美、吉田宏、高橋政夫、飯村茂之、伊五沢正光、新田政司、遠藤征彦
発表論文 :平成13年東北農業研究発表予定