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岩手県におけるだいず不耕起栽培の生産安定技術


[要約]

 水稲とのブロックローテーションを前提としただいず不耕起栽培では圃場排水対策が特に重要で、額縁明渠に加え播種溝に交差した弾丸暗渠を施工する。このことにより茎疫病発生も軽減される。また、雑草対策は播種前茎葉処理剤と播種後土壌処理剤を組み合わせた体系処理が効果的である。

[キーワード]

ダイズ、不耕起栽培、作付体系、圃場排水対策、雑草対策

[担当]岩手農研セ・園芸畑作部・野菜畑作研究室
[連絡先]電話 0197-68-4418、電子メール CE0008@pref.iwate.jp
[区分]東北農業・畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 岩手県の水田におけるだいず栽培は、生産組織による水稲とのブロックローテーションが多い。一方、不耕起播種及び無中耕・無培土を内容とした不耕起栽培は省力技術として期待できるが、圃場表面に雨水が停滞しやすく、湿害や茎疫病の発生により減収するほか、雑草発生も安定生産を妨げる要因となっている。このため、これらの問題の解決による不耕起栽培技術の安定化を図る。
[成果の内容・特徴]
1. 圃場排水対策としては額縁明渠が必須であり、これに加え、不耕起播種機により形成される播種溝に交差するよう、事前に弾丸暗渠を施工する。このことにより茎疫病の発生を軽減できる。弾丸暗渠の施工が困難な場合は前年の秋耕も有効である(図1)。
2. 雑草対策は、播種前の茎葉処理除草剤散布と播種後の土壌処理除草剤散布を組み合わせた体系処理が必要である。これにより慣行の耕起・土壌処理より除草効果が高まる(図2)。
3. 不耕起栽培では狭畦・密植との組み合わせにより最下着莢高が高まるとともに、百粒重及び収量もやや高まる(図3)。
4. 収穫は圃場面が平坦で機械収穫しやすいことから、刈り残しが少なく汚粒発生の危険性も低い(図4)。
5. 現地実証の結果から、不耕起だいずは水稲とのブロックローテーションにおいて、圃場排水対策を万全にすれば300kg/10aを上回る収量を得ることができる(図5)。
一方、転換畑の長期作付を前提にすると、不耕起だいず−冬期播種小麦−秋そばの2年3作体系が合理的で3作目ともに標準収量が確保される。また、秋そばの代替作目として極早生だいずの作付けも可能である(図5)。
[成果の活用面・留意点]
1. 前年秋耕はだいず播種までに地耐力の回復が困難な重粘質土壌等では避ける。
2. 施肥は不耕起播種機による側条施肥とするが、施肥量は慣行に準ずる。この場合、子実の外観品質・タンパク質含量は慣行の生産物と同等である。
3. 狭畦・密植における播種量は慣行の1.5〜2倍とし、倒伏軽減のため適期内の晩播とする。
4. 病害虫防除は慣行に準ずるが、圃場の冠水・滞水等により茎疫病が発生した場合は対象薬剤の追加散布が必要である。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:不耕起・無中耕・無培土栽培を基幹とした大豆の超省力安定栽培技術
予算区分:国庫(地域基幹)
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:門間剛、沼田聡