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セイヨウナシ「ゼネラル・レクラーク」に発生した黒斑病の症状


[要約]

  近年、青森県県南地方のセイヨウナシ「ゼネラル・レクラーク」の果実や葉に発生している黒色〜黒褐色の斑点症状は、Alternaria alternataに起因するセイヨウナシ黒斑病である。

[キーワード]

セイヨウナシ黒斑病、ゼネラル・レクラーク、果実被害、病徴

[担当]青森農林総研・りんご試験場・県南果樹研究センター
[連絡先]電話 0178-62-4111、電子メール kajuken@ags.pref.aomori.jp
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 青森県県南地方のセイヨウナシ「ゼネラル・レクラーク」は食味良好、大玉かつ高品質で、全国から高く評価されている。数年前から本品種において、主産地である南部町を中心に黒斑症状が発生して問題になっていたので、その原因を解明する。
[成果の内容・特徴]
1. 葉、果実での症状(図1)
1) 葉では最初、黒褐色、針頭大の小斑点を生じ、やがて褐色〜灰褐色、やや輪紋を呈した円形〜楕円形の黒斑症状を示す。数個の斑点が癒合して不正形の大型斑点を生ずることもある。
2) 果実では主として果点に、表面が平滑〜やや窪んだ0.5〜1.5mmの黒色〜黒褐色の小斑点を生じる。これによって、果肉が腐敗することはない。
2. 発生実態
1) 南部町、名川町および五戸町における「ゼネラル・レクラーク」の葉と果実で被害が確認されている(表1)。
2) 県南果樹研究センターでは、「ル・レクチエ」の葉、果実でも被害が確認されている。一方、「ラ・フランス」、「バートレット」、「フレミッシュ・ビューティー」、「グランドチャンピオン」および「マルゲリット・マリーラ」では被害がみられず、品種間差異が顕著である。
3. 病原菌
1) 「ゼネラル・レクラーク」の被害果実からAlternaria属菌が高率に分離され、被害葉からも低率ながら本菌が分離される(表1)。
2) 分離菌の分生子は、セイヨウナシ黒斑病菌(Alternaria alternata)の形態とほぼ一致する(表2)。
3) 分離菌の分生子接種により、「ゼネラル・レクラーク」と「ル・レクチエ」の果実に黒斑症状が再現され、発病部位から接種菌が再分離される。
4. まとめ
1) 青森県で「ゼネラル・レクラーク」の葉と果実に発生している黒斑症状は、Alternaria alternata (Fr.) Keisser によるセイヨウナシ黒斑病である。
2) セイヨウナシ黒斑病の発生は新潟県の「ル・レクチエ」に次いで、2例目である。
[成果の活用面・留意点]
1. 黒点病(Mycosphaerella pomi)の果実被害と異なり、斑点周辺が濃緑色を呈することがないので、両病害を識別できる。
2. ナシ黒斑病に登録のある薬剤は全般的に高い防除効果を示すので、落花20日後以降の定期散布で防除できる。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:特産果樹の病害虫防除に関する試験
予算区分:県単
研究期間:2003年度
研究担当者:小笠原博幸、荒井茂充