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クラブアップルから選抜したリンゴの受粉専用品種


[要約]

 クラブアップル52品種の中から、「ふじ」と交雑和合性が高い受粉専用品種として「Snow Drift Crab」、「Profusion」、「Red Bud Crab」を選抜した。

[キーワード]

クラブアップル、「ふじ」、受粉専用品種

[担当]秋田果樹試・栽培部・品種担当
[連絡先]電話 0182-25-4224、電子メール afhinsyu@mail2.pref.akita.jp
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 近年、リンゴの栽培品種は、「ふじ」偏重が続く中、「ふじ」と相互に交雑和合性が無い「早生ふじ」等の導入により受粉樹不足が進んでいる。こうした受粉環境の悪化は、開花時の天候不順に起因する結実不良や果実品質の低下を助長しており、早急な対応が求められている。そこで、クラブアップルの中から「ふじ」と交雑和合性が高い受粉専用品種を選抜する。
[成果の内容・特徴]
1. 選抜した「Snow Drift Crab」、「Profusion」、「Red Bud Crab」の3品種は、いずれも「ふじ」に対し高い結実率を示し、S遺伝子型の解析からも交雑和合性を具備している(表1)。
2. これら3品種の開花期は、受粉対象品種の「ふじ」に対し、ほぼ同様の推移を示す(表2)。
3. これら3品種の開花量は、いずれもえき花芽の比率が高いことから、開花した花弁によって1年枝全体が被われるほど密度が高く、花粉量も「ふじ」並みに多い。(表3、写真1)。
4. 結実した果実の大きさは、「Snow Drift Crab」と「Red Bud Crab」は1g程度、   「Profusion」は6g程度と極小であることから、3年〜4年生樹においては摘果管理を 行わなくとも翌年の開花量に影響はない(表3)。
5. M.9ナガノに接ぎ木した4年生樹の開花期における樹姿は、いずれも立ち型〜中間型を示し、樹冠は樹高1.5〜1.9m、樹幅50〜70cmとコンパクトな傾向が認められる(写真1)。また、通常の防除下で特に問題となる病虫害の発生は認められない。
6. M.9ナガノに接ぎ木した4年生樹の開花期における樹姿は、いずれも立ち型〜中間型を示し、樹冠は樹高1.5〜1.9m、樹幅50〜70cmとコンパクトな傾向が認められる(写真1)。また、通常の防除下で特に問題となる病虫害の発生は認められない。
[成果の活用面・留意点]
1. 「ふじ」の受粉樹が不足している園地や地域で導入する。
2. これら3品種は、S遺伝子型から判断して「ふじ」以外の主要品種とも高い交雑和合性が予想されることから、防除薬剤のドリフトに絡む園地再編化を進める際にも活用が期待される。
3. 3品種の開花期は、樹齢が進み樹勢が落ち着くに連れてやや早まる傾向がみられており、受粉専用樹としてより理想的な生態を示すものと予想される。
4. 園地への導入方法や導入後の樹体管理については、今後の検討課題である。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:リンゴ「ふじ」の受粉専用品種の選抜
予算区分:県単
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:上田仁悦、照井真、小林香代子