オウトウ「佐藤錦」のシアナミド剤による休眠打破と収穫期の前進化
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[要約] |
オウトウ「佐藤錦」に対し、7℃以下低温遭遇時間1000時間時点(12月下旬)から自発休眠覚醒期(1月中〜下旬)までの期間にシアナミド剤0.5〜1.0%溶液を散布することにより自発休眠が打破され、収穫時期の前進化が可能になる。
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[キーワード] |
おうとう、佐藤錦、シアナミド、休眠打破、ハウス栽培、生育促進
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[担当]山形園試・果樹研究部
[連絡先]電話 0237-84-4125、電子メール engei@pref.yamagata.jp
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい] |
おうとう「佐藤錦」の自発休眠覚醒期は山形県村山地方において1月中旬〜下旬頃(7℃以下の遭遇時間1650時間)であるため、加温ハウス栽培での加温開始時期も限定されていた。そこで、休眠を人為的に覚醒させ、安定的に収穫期の前進を図るため、シアナミド剤について休眠打破効果と効果的な使用方法について検討した。
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[成果の内容・特徴] |
1. |
1.おうとう「佐藤錦」に対して、自発休眠覚醒期(1月中〜下旬)前にシアナミド剤0.5〜1.0%溶液を散布することにより、1月中旬加温開始の作型で9日程度、1月下旬加温開始の作型で8日程度、3月上旬加温開始の作型で3日程度、4月上旬被覆の無加温栽培および露地栽培で2日程度満開日が早まる。一方、収穫期の前進効果はその後の温度管理や着果程度の影響を受ける。また、自発休眠が覚醒した後の散布(2月以降)ではその効果は低い。(図1) |
2. |
散布濃度は、シアナミド剤0.5%と1.0%ではほぼ同程度の発芽促進効果が得られる。(データ省略) |
3. |
散布時期は7℃以下の遭遇時間1000時間以降の散布で休眠打破効果の年次変動が少なく、効果が安定している。遭遇時間が700時間程度での散布は、開花の揃いが悪く結実も不安定である(1月中旬加温開始の作型で比較した場合)(表1)。 |
4. |
連年の散布は、2年目までは休眠打破効果も同様にみられ、樹の生育や花芽の着生に及ぼす影響は少ない。(データ省略) |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
シアナミド剤は施設栽培および露地栽培で利用できるが、7℃以下遭遇時間1300時間(1月上旬)より前の加温開始は試験例が少なく結実安定性について未確認である。また、1月からの早期加温栽培では、シアナミド剤の散布にかかわらず樹勢の低下や花芽の充実が劣る場合が多いので、収穫後の肥培管理を十分に行う。 |
2. |
処理後の降雨などによる再散布、発芽後の散布、使用基準以上の高濃度散布は花芽、葉芽の不発芽の割合が高くなるので行わない。樹勢が弱い樹や日当たりが悪く花芽の充実が悪い樹への散布は、不発芽や芽の凍害が多く発生することが懸念されるので行わない。 |
3. |
おうとうで休眠打破、発芽促進を目的に登録のあるシアナミド剤は現在「CX−10」(日本カーバイド工業株式会社製)がある。使用基準を厳守する。 |
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:園芸作物奨励品種決定調査
予算区分:県単
研究期間:1998〜2003年度
研究担当者:須藤佐藏・渡辺 伸・工藤信・安孫子裕樹・佐藤健治・佐々木恵美
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