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晩霜害によるブドウ「巨峰」の新梢及び花穂の被害様相と事後対策技術


[要約]

 晩霜の被害にあった「巨峰」において、新梢の被害程度から花穂の被害程度を推察することができる。被害が軽い花穂では有核栽培が可能であり、被害が中〜重程度でも、ジベレリン処理により十分な着粒数と果房重が確保でき、無核栽培が可能である。

[キーワード]

ブドウ、晩霜害、ジベレリン処理

[担当]福島果樹試・栽培部・栽培研究室
[連絡先]電話 024-542-4951、電子メール kuwana_atushi_01@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 平成14年4月27〜29日にかけて晩霜により、ブドウで甚大な被害が発生した。被害発生時の生育ステージは、新梢長5〜10cm、展葉数3〜4枚程度であり、生育が進んだ状態での被害であったため、新梢や葉の褐変や枯死、花穂の障害などの被害が確認され、事後対策が大きな課題となった。そこで、新梢や花穂を被害程度別に分けて追跡調査を実施し、事後対策技術の有効性について検討した。
[成果の内容・特徴]
1. 被害16日後(5月14日)に、新梢と花穂の被害程度をそれぞれ指数化して分類した結果、新梢の被害程度と花穂の被害程度の間には正の相関(第1花穂:r=0.765**、第2花穂:r=0.793**)が認められる。よって、新梢の被害程度から花穂の被害程度を推察することが可能である(図1)。
2. 開花後23日(6月27日)に花穂被害程度別に着粒数を比較すると、被害程度が軽(花穂被害指数が0〜1)では適正着粒数を確保できるが、被害程度が中〜重(被害指数2〜3)では着粒数が極端に少ない(表1)。
3. 被害を受けた花穂の結実の安定化を目的にジベレリン処理(第1回処理:満開期:フルメット加用ジベレリン水溶剤12.5ppm:浸漬処理、第2回処理:満開後16日:ジベレリン水溶剤25ppm:浸漬処理)により、花穂被害程度が中〜重(被害指数2〜3)でも収穫果は十分な着粒数、果房重が確保できる(図1、表2)。
[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は晩霜の被害を受けた「巨峰」(10年生、自根)3樹を対象として得られたものである。
2. 晩霜の被害に遭った場合は、新梢の被害程度を観察し、これから花穂の被害程度を推察する。そして早めに有核栽培にするか無核栽培にするかを判断することで、商品性のある果実をより多く生産できる。
3. 被害の軽い新梢が多い場合は、被害の軽い花穂が多いと推察されるため、通常の有核栽培とする。
4. 被害が重い新梢が目立つ場合は、被害の重い花穂が多いと推察されるため、ジベレリン処理による無核栽培とする。
5. 晩霜の被害にあった場合、作業を遅らせがちになるが、作業を遅らせると花振るいを起こしてしまうため、通常通り花穂整形を実施する。
6. ジベレリン処理による無核栽培を行うことで、障害の重い花蕾も通常通り着粒するので、有核栽培よりも早めに摘粒作業に入る必要がある。
7. 着房数は被害後の新梢及び副梢の生育状況にもよるが、基本的には1新梢に1果房とする。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:晩霜害によるブドウ「巨峰」の被害様相と技術対策
予算区分:県単
研究期間:2002年度
研究担当者:桑名篤、斎藤義雄(病害虫防除所)、増子俊明(県中農林事務所)、安部充(生産流通領域)
発表論文等:
1)桑名ら(2003)園学平15東北支部:27-28.