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新規複合交信攪乱剤(OTP-N剤、コンフューザーN)を利用したナシの効率的な害虫防除法


[要約]

 新たな複合交信攪乱剤OTP-N剤は、従来の製剤(OTPP剤、コンフューザーP)よりナシヒメシンクイに対する防除持続期間が延長され、リンゴコカクモンハマキに対する防除効果も安定する。

[キーワード]

ナシ、交信攪乱法、複合交信攪乱剤、ナシ害虫防除

[担当]福島果樹試、病理昆虫部、虫害研究室
[連絡先]電話 024-542-4199、電子メール kajyusi@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術、普及

[背景・ねらい]
 モモ、ナシ用として開発された複合交信攪乱剤OTPP剤をナシ園で利用するには、ナシ果実被害をもたらすナシヒメシンクイへの効果が不十分である。これは有効成分の早期消失が原因である。とくにモモ、ナシ混在地域で本種の被害が目立つ。また、リンゴコカクモンハマキに対する交信攪乱効果も不十分であり、交信攪乱成分の見直しが必要である。
 この点を改良し、かつモモのみの害虫であるモモハモグリガの成分を除くことで、より安価な製剤が開発されたことから、ナシあるいはナシ、モモ混在地域での本剤の有効な利用技術を検討し開発する。
[成果の内容・特徴]
1. 新たな複合交信攪乱剤OTP-N剤は、とくにナシでの利用を想定して開発されており、従来の製剤(OTPP剤)と比較してナシヒメシンクイの交信攪乱成分が多いため、効果の持続期間が延長される(図1)。
2. ハマキムシ類のうちリンゴコカクモンハマキの交信攪乱成分も改善されたことから、本種への防除効果も安定する。
3. ナシ単作地域ではハマキムシ類越冬世代成虫羽化前の5月中旬に OTP-N剤を150〜200本/10a処理することで、殺虫剤の散布回数を削減しても、モモシンクイガを含むシンクイムシ類、ハマキムシ類の対象害虫4種による被害を抑えることができる(表1)。
4. ナシ・モモ混在地域ではモモ園からナシヒメシンクイの飛来によりナシ園での果実被害が多発傾向にあるが、本種越冬世代成虫羽化前の4月下旬にOTP-N剤を早期処理することで、モモでの新梢被害が減少し(表2)、この密度低下によってその後の交信攪乱効果が高まりナシの果実被害を回避することができる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
1. 園の周囲からの対象害虫の飛び込みがあると、防除効果が低下するので、周囲の寄主植物とその被害状況を導入前に十分に調査する。
2. 複合交信攪乱剤を利用することで対象害虫の密度が減少するため、対象害虫に対する殺虫剤を削減することが可能であるが、それによって対象外害虫が多発することがあるので、削減の際には害虫の発生状況を調査しながら慎重にすすめる。
3. 交信攪乱法による害虫防除は実施面積が広いほど効果が高く、十分な効果を得るには3ha以上の面積を必要とする。これより小規模な園地で利用する場合にはとくに園周辺部に製剤を追加処理する。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:複合交信攪乱剤(OTP-N剤)を利用したナシの新しい害虫防除法
予算区分:県単
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:荒川昭弘、岡崎一博、阿部憲義
発表論文等:荒川昭弘、岡崎一博(2002)応動昆(講要)168.