マメ葉で飼育したミヤコカブリダニはリンゴ葉上への定着を拒まない
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[要約] |
天敵ミヤコカブリダニのリンゴへの定着率は、室内試験においては、ミヤコカブリダニを累代飼育した寄主植物のインゲンマメに影響されることはなく、主に餌であるナミハダニの密度に影響され、密度が高い場合に定着率が高い。
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[キーワード] |
ミヤコカブリダニ、ナミハダニ、リンゴ、定着因子、寄主植物、餌密度
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[担当]果樹研・リンゴ研究部・虫害研究室
[連絡先]電話 019-641-3164、電子メール toyosin@affrc.go.jp
[区分]果樹、東北農業(果樹)
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい] |
リンゴでは、天敵放飼によるハダニ類防除が試みられているが、樹上での定着性が悪く、その成功例は報告されていない。定着性に関わる要因として、餌密度や天敵密度などが検討されているものの、主要因として寄主植物を取り上げて検討した事例はほとんどない。そこで、果樹類のナミハダニに登録のあるミヤコカブリダニを材料として、リンゴに放飼する場合の定着性に、飼育のために利用している寄主植物であるインゲンマメの影響があるかを、餌密度、天敵密度、定着部位のサイズなどの要因と組み合わせて明らかにする。
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[成果の内容・特徴] |
1. |
ナミハダニを餌としてインゲンマメで飼育したミヤコカブリダニは、寄主植物をリンゴへ変更すると、寄主植物を変更しない場合よりも定着率が高い(図1)。つまり、リンゴへの天敵放飼において、リンゴ葉が定着阻害要因とはなっていない。むしろ、定着性は、ナミハダニとミヤコカブリダニそれぞれの密度に依存する(表1)。 |
2. |
餌の根絶までの期間は、ナミハダニとミヤコカブリダニそれぞれの密度に依存し、ミヤコカブリダニに対するナミハダニの割合が高いほど根絶までの時間が長くなる傾向が一般に認められる(表2)。ただし、同割合が高い場合には、ミヤコカブリダニの逃亡率が高まり、ナミハダニ食い尽くしまでの期間が長くなる場合もある。また、同割合が低い場合には、ミヤコカブリダニの定着率が高まり、ミヤコカブリダニの繁殖により子世代の捕食圧が加わり(データ略)、ナミハダニ食い尽くしまでの期間が短くなる場合もある。 |
3. |
寄主植物の変更によって、ナミハダニ食い尽くし後にミヤコカブリダニの滞在期間が短くなることはない。むしろ、インゲンマメで飼育した個体を移した場合に、インゲンマメよりもリンゴで滞在期間が長くなる(表3)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
ミヤコカブリダニはリンゴでの定着性が良いので、馴化処理は必要ない。 |
2. |
ナミハダニの寄生密度が高いときにミヤコカブリダニの定着率が高いので、野外放飼時の定着率を高めるために、ナミハダニをあらかじめ接種してからミヤコカブリダニを放飼する方法(prey-in-first method)の効果を検討することが望まれる。 |
3. |
ナミハダニの寄生密度が高すぎると、ミヤコカブリダニだけではナミハダニの増殖を抑えることができない場合があり、一方、ミヤコカブリダニの密度が高いとミヤコカブリダニ間の干渉作用で逃亡率が高くなる場合もあるので、放飼に最適なナミハダニ・ミヤコカブリダニ比を検討することが望まれる。 |
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:リンゴ寄生ハダニ類に対する土着天敵類の探索および生態特性の解明
課題ID:09-03-05-02-11-03
予算区分:交付金(2003年度重点推進強化費)
研究期間:2001〜2005年度
研究担当者:豊島真吾、高梨祐明
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