岩手県北部における葉たばこ農家の経営発展と課題・対策
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[要約] |
先進的な葉たばこ農家では、概ね10年間隔で新技術とそれに対応する機械・施設をいち早く導入して経営発展してきたが、小規模・分散圃場や経営管理等の課題を抱えており、農地の大規模・団地化や行政の現地機関による経営指導などの対策が必要である。
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[キーワード] |
葉たばこ、経営発展、行政支援
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[担当]岩手農研セ・企画経営情報部・農業経営研究室
[連絡先]電話 0197-68-4404、電子メール y-Imura@pref.iwate.jp
[区分]東北農業・経営
[分類]行政・参考
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[背景・ねらい] |
岩手県において、葉たばこは粗生産額が米・リンゴに次ぎ耕種部門の第3位であり、中山間地域等の農家経営にとって不可欠な基幹作目である。ここでは、アンケート及び面接調査をもとに、県北部を中心とした葉たばこ農家の経営発展過程と課題・対策を示した。
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[成果の内容・特徴] |
1. |
岩手県北部(二戸)の葉たばこ農家の特徴を中南部(盛岡、千厩)との比較でみると、若い世代を経営主とする専業的な農家が比較的多数存在し、認定農業者が半数を超えており、販売額800万円以上の農家も少なくない。将来は15%の農家が拡大の意向を持っている(表1)。 |
2. |
先進的な葉たばこ農家では、自己資本の蓄積をもとに、概ね10年間隔で新技術とそれに対応する機械・施設をいち早く導入して、他の作目から葉たばこへと転換し、資本・労働集約化によって収益性の向上を図るとともに、借地等により経営規模を拡大している。現経営主が主導する昭和60年代からは、より省力・高品質化に重点を置いて規模拡大を図っている。現在はa:現存の土地・資本と補助的な雇用による家族経営の維持、またはb:土地・資本の増強と雇用労力を主とした規模拡大、のいずれかを選択する段階にさしかかっている。(表2・3) |
3. |
経営環境の変化のもとでの葉たばこ農家の課題・対策として以下の点が指摘できる。
1) |
土地利用の面では、個別的な借地等による小規模・分散圃場での規模拡大が行き詰まっている。今後は、高架型作業機を十分活用できる農地の大規模・団地化が必要であり、被害が拡大しつつある立枯病対策にもつながる、地域的な農地利用の合意形成や第三者による農地の利用集積に関する情報提供・斡旋が重要である。 |
2) |
労働力の面では、経営主の約3/4が50代以上であり、近い将来に大規模農家も後継者問題の顕在化が見込まれる。これに対して、現在のたばこ作は20年前より約3割の省力化と軽労化が進み、1時間当たり所得は1,000〜1,200円かそれ以上(概ね1.8ha規模で販売額800万円、所得500万円)が期待できるなど、他産業との比較も視野に入れた有利性の評価・PRが経営継承にとって重要である。 |
3) |
資本整備の面では、これまで公社・JTの助成を比較的容易に活用できることが着実な規模拡大を可能にした大きな要因であった。しかし、現在はJT組織の合理化が進められており、将来的には制度資金等による対応を含む検討が重要である。 |
4) |
葉たばこ農家は、生産管理が高位・平準化しているものの、経営管理は必ずしも十分とはいえない。平成16年度から県耕作組合の事務所が一本化されることから、行政の現地機関による個別の経営指導(例えば前述2のbの規模拡大に伴って必要な事項)を、先進的な農家に対して重点的に行うなど、関係機関・団体による側面的な支援の必要性が高まっている。 |
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[成果の活用面・留意点] |
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:主業型農家の経営発展過程分析による育成支援方策の解明
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:井村裕一
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