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温湯処理により杵搗(きねつ)き生餅製造時間が短縮できる


[要約]

 無糖無添加物の杵搗き生餅の製造において、蒸し処理前に50℃/1〜2時間、または55℃/1時間程度の温湯処理を施すことにより、通常行われる浸漬(6〜12時間)を行わなくてもやわらかい餅が製造でき、製造時間が短縮できる。また、この処理により製品のやわらかさを48時間程度保つことが可能となる。

[キーワード]

餅、浸漬省略、温湯処理

[担当]岩手農研セ・生産環境部・保鮮流通技術研究室
[連絡先]電話 0197-68-4425、電子メール h-hirabuchi@pref.iwate.jp
[区分]東北農業・流通加工
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 農家グループ等による杵搗き生餅の加工は直売ニーズの増加等から盛んになっているが、搗きたて生餅の硬化をいかに防ぐかが課題であった。これまで、酵素処理、糖類の添加または二度搗きなどの技術が用いられてきたが、無添加でより手軽に硬化を抑制する技術が求められた。また、浸漬時間を短縮するため、経験的にぬるま湯に浸ける方法が用いられてきたが、その条件は明らかでなかった。これらの課題に対応するため温湯処理技術を開発した。
[成果の内容・特徴]
1. 無糖無添加物の杵搗き生餅の製造において、糯米を洗穀後、蒸し処理前に温湯処理を実施することにより、従来行われてきた6〜15時間の浸漬を行わなくてもよく、生餅の製造時間を短縮できる(図1、図4)。
2. 水稲糯品種ヒメノモチを用いた杵搗き生餅の製造における温湯処理条件は、50℃/1〜2時間、または55℃/1時間程度である。なお、温湯処理の際の温湯は餅米に対して十分な水量とし、処理中は温度の保持に努める
3. 温湯処理を行うことにより餅をやわらかく保てる時間は48時間程度まで延長できる(図2、3)。しかし、処理温度または時間が過度だと餅の硬化が逆に促進される場合がある。
4. 水稲糯品種こがねもちでは温湯処理後の硬化がヒメノモチに比べて速く、抑制効果が短い傾向にある。なお、こがねもちの温湯処理条件は50℃/2時間が望ましい(図3)。
[成果の活用面・留意点]
1. 温湯処理を行えば、従来行われている浸漬を実施しなくてもよく、餅の製造時間が短縮できるため、当日の緊急の注文等にも応じることが可能となる
2. 本技術は生餅の柔らかさを保って販売する際の技術であり、餅搗き後早く硬化させることが必要な切り餅の製造などに利用する技術ではない。
3. 温湯処理温度を確保するための恒温器がない場合は、きめ細かく温度を計測しつつ、温湯の交換や差し湯をし、温度を50〜55℃の範囲に維持する。その際の処理時間は1時間とする。なお、温度が30〜40℃では低温繁殖性の雑菌が増加しやすい。
4. ミキサー式餅つき機を用いた場合は、35〜55℃/2時間以内で従来法より若干の硬化抑制効果が見られるが、もとより搗き上がりの餅のコシが弱くだれやすい特徴があるため、硬化抑制のための温湯処理は必要としない(図4)。なお、スチーム加温により短時間で糯米を浸漬することが可能な機種もある。
5. 用いる糯米の品種、産年または産地等により処理温度及び処理時間に対する反応が異なることが考えられるので、随時テスト加工を実施し条件を確認することが望ましい。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:餅加工品の硬化抑制技術の開発
予算区分:フードシステム
研究期間:2002年度
研究担当者:平渕英利