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RT-PCRを用いたユリの3種病原ウイルスの同時検出


[要約]

 ユリにおいて主要な病原ウイルスであるキュウリモザイクウイルス,ユリモットルウイルス,ユリ潜在ウイルスを高感度かつウイルス種を識別して同時に検出できるRT-PCRによる遺伝子診断技術を確立した。

[キーワード]

ユリ,キュウリモザイクウイルス,ユリモットルウイルス,ユリ潜在ウイルス,RT-PCR

[担当]宮城農園研・バイオテクノロジー開発部・遺伝子工学チーム,中央農研・病害防除部・ウイルス病害研究室,病害防除システム研究室
[連絡先]電話 022-383-8131、電子メール marc-kk@pref.miyagi.jp
[区分]東北農業・生物工学
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 ユリをはじめとする球根花きは,ウイルス病の被害が大きく根本的に有効な防除手段がない。また,本県育成ユリ品種のウイルスフリー球根供給のため,独自に診断体制を確立する必要がある。そこで,ユリを対象としてRT-PCRによる正確で感度の高いウイルス検出法を確立する。
[成果の内容・特徴]
1. ユリ生葉0.1gから全RNAを抽出し,RT-PCRを行う。この時,キュウリモザイクウイルス(CMV),ユリモットルウイルス(LMoV),ユリ潜在ウイルス(LSV)特異的プライマー6種(表1)を等量ずつ用いることで,3種ウイルスを同時検出できる(図1)。また,増幅産物の電気泳動による移動度の違いからウイルス種を特定できる。
2. CMV,LMoV,LSV特異的プライマーを用いた検出感度は,ウイルス感染ユリ葉粗汁液を健全ユリ葉粗汁液によって希釈した試料を用いた場合,10万倍希釈以上である(図2)。この検出感度は,ウイルス抗血清を用いたDIBA法,間接ELISA法より160倍以上高い(データ略)。
[成果の活用面・留意点]
1. 全RNAの抽出にはRNeasy plant mini kit(QIAGEN社)を用いる。
2. RT-PCRにはOne step RT-PCR kit(QIAGEN社)を用い,反応条件は以下のとおりである。
50℃ 30分/95℃ 15分/(95℃ 30秒→53℃ 30秒→72℃ 1分)×40回/72℃ 10分
3. 表1のウイルス特異的プライマーのうち, CM1fはCMVサブグループIに特異的な配列であり,ごく近縁のCMVサブグループIIを検出できない。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:花きのウイルス病防除技術の開発
予算区分:県単
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:佐藤英典,中村茂雄,鈴木誠一,大村敏博(中央農研),本田要八郎(中央農研)
発表論文等:
1)佐藤ら(2002)日植病報67 (2):175
2)Sato et al. (2002) J. Phytopathology 150:20-24