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SSRマーカーによるオウトウの品種識別・親子判定


[要約]

 モモおよび酸果オウトウ由来SSRマーカーを使うことで、葉片から単離したDNAを用いて、オウトウの品種識別が可能である。また、親子関係を推定することが可能である。

[キーワード]

SSRマーカー、品種識別、親子判定

[担当]山形園試・バイオ育種部
[連絡先]電話 0237-84-4125、電子メール takashinat@pref.yamagata.jp
[区分]東北農業・生物工学
[分類]科学・普及

[背景・ねらい]
 SSRマーカーは、遺伝的に近縁の品種間を識別する上で、信頼性の高いDNAマーカーである。核果類では、モモ、アーモンド、スモモ、アンズなど各樹種で開発されたSSRマーカーが相互に利用できることが知られている。
 本研究では、モモ由来SSRマーカーおよび酸果オウトウ由来SSRマーカーを用いて、オウトウの主要栽培品種および山形園試育成系統の多型を検出するマーカーを選抜し、これらを用いた主要品種の品種識別および親子判定を行った。SSRマーカーを用いてDNAレベルでの品種識別が可能になることで、品種不明の苗木・成木などの判定や、交雑母本となる品種・系統の親子判定ができ、オウトウ育種の効率化の一助になる。
[成果の内容・特徴]
1. 検討したモモおよび酸果オウトウ由来SSRマーカーのうち、オウトウ葉片から抽出したDNAを用いた27個のSSRマーカー(表1)は、オウトウ品種・系統間で多型を示す。
2. 27個のSSRマーカーを用いて19品種・系統の品種判定が可能である(表2,3)。
3. オウトウ品種・系統間の親子関係を検証することが可能であり、一部の品種については、通説の親子関係が否定される(表4)。
4. PCR増幅は、蛍光プライマーを用いて94℃1分の後94℃1分、55℃1分、72℃2分を35回行う。得られた増幅断片は、DNAシーケンサーABIPRISM310にて分離・検出し、GeneScanソフトで行う。
[成果の活用面・留意点]
1. 19品種・系統以外についても、SSR分析を行うことで品種判別が可能と考えられる。
2. 親子判定は、育成された状況やS遺伝子型等の情報とあわせて判断する。
3. モモおよびオウトウSSRマーカーは、(独)果樹研より分譲を受けたものである。
4. 枝変わり品種については、識別できない。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:バイオ技術を利用した果樹の新育種法の開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:高品善、松田成美、山本俊哉(果樹研)、林建樹(果樹研)、木村鉄也(種苗管理センター)、西村幸一
発表論文等:高品ら(2004)育種学研究6(別1):181.