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自然条件下で栽培されたリンドウにおける葉片培養技術の開発


[要約]

 自然条件下で栽培されたリンドウの葉片を材料とし、培地に添加する植物成長調整剤としてホルクロルフェニュロンとNAAを用いる増殖法を開発した。本培養によって得られた植物体に形態的な変異は確認されなかった。

[キーワード]

リンドウ、葉片培養、ホルクロルフェニュロン、NAA、変異

[担当]福島農試・育種班・バイオテクノロジー研究室
[連絡先]電話 024-932-7790、電子メール noushi.aac@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・生物工学
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 リンドウの培養では、初代培養に自然条件下で栽培されたリンドウの越冬芽や萌芽期の茎頂が用いられている。しかし、この方法では茎頂部摘出による母株の損傷が大きく、実体顕微鏡を用いることから操作が煩雑等の欠点がある。これまでに培養系における葉片を材料とした増殖法は開発されているが、栽培下における葉片を材料とした報告はない。そこで本試験では栽培下の葉片を材料とする増殖法の開発を目的に、葉片置床時に培地に添加する植調剤の濃度と葉片の採取時期について検討する。さらに本培養によって再生された植物体はカルス経由のため、開花時に形態的特性を調査して変異の有無を確認する。
[成果の内容・特徴]
1. リンドウの葉片培養による増殖は、葉片置床、カルス形成、シュート形成、発根、植物体の再生からなる(図1)。
2. シュート形成率は、葉片置床時に培地に添加する植物成長調整剤(植調剤)の濃度、系統によって異なるが、ホルクロルフェニュロン1.0mg/l、NAA0.1〜1.0mg/lの組合せが良好である(図2)。
3. 葉片の採取時期についてみると、シュート形成率は萌芽期と展葉期が高いが(図3)、両者のうちでは葉片の豊富で採取しやすい展葉期が優れる。
4. 圃場に定植した葉片由来培養株と母株との間において、形態的変異は確認されない(表1)。
[成果の活用面・留意点]
1. 本培養法は、茎頂培養よりも母株の損傷が極めて少なく、操作が簡便である。
2. 優良個体の維持・増殖に利用できる。
3. 栄養系品種の育成に活用できる。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:リンドウの培養増殖法の開発−葉片培養技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:鈴木誉子、林有子
発表論文等:H15年度園学雑別(1)p384