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水稲幼穂伸長モデルを利用した水稲障害不稔危険期予測法


[要約]

 水稲の障害不稔に対する危険度は、幼穂伸長モデルによる危険期の特定とその期間の冷却量を求めることで、予測できる。

[キーワード]

水稲、障害不稔、幼穂伸長モデル

[担当]福島農試・種芸部・情報システム研究室
[連絡先]電話 024-932-7785、電子メール noushi.acc@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・生産環境(農業気象)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 水稲の障害不稔は、低温が長期間連続すると水稲の低温感受性の高い期間の延長と低温遭遇量の増大が同時に起こり、発生が多くなるが、低温の時期と水稲の生育ステージとの関係で、被害の発生に大きな差が見られる。平成5年に作成した幼穂伸長モデルを修正し平成16年の気温を当てはめ、低温感受性の高い時期と低温の程度を推定し、冷害危険期を特定する手法を検証する。
[成果の内容・特徴]
1. 水稲の障害不稔は、幼穂長が3〜12cmの時期の冷却量が多いほど多発し、耐冷性が「極強」の品種でも冷却量が10を超えると被害が発生する(図1)。
2. 幼穂発育過程は、幼穂形成始期後の10℃以上の積算温度を基にした関数で近似できる(図2)。
3. 本モデルでは、水稲の幼穂発育低温感受性を表す指標として幼穂長を、低温の程度を表す指標として冷却量を用いることで、生育ステージの異なる水稲の低温感受性が高い期間の推定とその期間の低温の程度を数値化でき、障害不稔の危険期が予測できる(図3、表1)。
4. 幼穂発達過程は、計算の起点を幼穂形成始期としているが、幼穂形成始期が不明でも伸長途中の幼穂長が測定できれば危険期を推定できる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
1. この予測法は、水稲の幼穂長および気温をパラメータとして使用するため、生産者や指導機関の職員がほ場単位の冷害危険期を予測することができる。
2. 本モデルは、穂ばらみ期の低温が幼穂伸長を抑制し、その結果低温感受性の高い時期が長期化し、被害が拡大する過程を評価できるモデルである。
3. 本モデルでは、当該年次の障害不稔の危険期予測に加え、田植えの時期や品種構成、技術対策のリスク評価に活用できる。
4. 本成果の冷却量の指標は、幼穂形成期および穂ばらみ期に低温に遭遇した水稲を対象としている。
5. このモデルは、福島県農業試験場の標準的な施肥法に基づく栽培試験の解析結果を基に作成しており、幼穂伸長モデルのパラメータは品種ごとに作成する必要がある。また、障害不稔と冷却量の関係についても別途検討が必要である。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:変動気象下における作物生産支援シミュレーションモデルの構築
予算区分:ITプロ
研究期間:2003年度
研究担当者:平俊雄、荒川市郎