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有機質肥料を使用した水稲の減化学肥料栽培の安定化


[要約]

 市販されている有機質肥料の窒素無機化率は50〜70%である。総施肥窒素量の半量を有機質肥料で代替えする減化学肥料栽培において、有機質肥料の窒素無機化率を考慮して施用すると、水稲の窒素吸収量は慣行栽培と同程度となり、安定した収量を確保できる。

[キーワード]

水稲、減化学肥料栽培、有機質肥料、窒素無機化率

[担当]青森農林総研・環境保全部
[連絡先]電話 0172-52-4311、電子メール kaori_sato@ags.pref.aomori.jp
[区分]東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 全国的に水稲の減化学肥料栽培は増加傾向にあるものの、収量面で不安定な要素があり有機質資材を使用した安定的な減化学肥料栽培技術の確立が必要とされている。化学肥料代替となる有機質資材としては扱いやすく成型された有機質肥料が最も導入しやすいと考えられる。そこで、県内で市販されている有機質肥料の窒素無機化率及び窒素無機化パターンを調査し、有機質肥料を使用した水稲の減化学肥料栽培法を検討する。
[成果の内容・特徴]
1. 有機質肥料の窒素無機化率及び窒素無機化パターン
(1) 市販されている有機質肥料5資材の窒素無機化率(25℃、70日間培養)は50〜70%である(表1)。
(2) 5資材とも総じて培養初期は窒素無機化率が低く、その後緩やかに窒素無機化率が上昇する(図1)。
2. 減化学肥料栽培
(1) 総施肥窒素量の半量を有機質肥料で代替し、基肥として施用する。残り半量は化学肥料を用い、基肥と追肥に使用する。
(2) 有機質肥料の施用量を保証窒素成分値と窒素無機化率から算出して施用すると、保証窒素成分値のみで算出した場合に比較し、低温年においても窒素吸収量が大きく低下することなく、慣行栽培並の収量を安定して確保できる(表2)。
有機質肥料施用量(kg/10a)=必要窒素量(kg/10a)×100/保証窒素成分値(%)×100/窒素無機化率(%)
[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は黒ボク土で「つがるロマン」を供試した結果である。
2. 栽培体系は基肥+穂肥一回体系とする。
3. りん酸、カリは施肥基準量になるように不足分を化学肥料等で施用する。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:水稲の青森型減化学肥料農産物栽培技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:佐藤香緒里、清藤文仁