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水溶性リン酸の多い家畜ふんたい肥は肥効が高い


[要約]

 家畜ふんたい肥から水抽出される水溶性リン酸量はたい肥の種類によって異なり、リン酸固定力の異なる灰色低地土、黒ボク土いずれにおいても、その量が多いほどリン酸肥効が優れる。

[キーワード]

家畜ふんたい肥、水溶性リン酸、黒ボク土、灰色低地土

[担当]宮城古川農試・土壌肥料部
[連絡先]電話 0229-26-5107、電子メール tnori@faes.pref.miyagi.jp
[区分]東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 近年、たい肥センターの増加等を背景に家畜ふんたい肥の一層の有効利用が求められている。一方、畑土壌ではリン酸の蓄積傾向が指摘されている。たい肥には一般にリン酸成分が多く含まれるため、その肥料的効果を考慮した施用が求められる。そこで、原料の異なる家畜ふんたい肥数種を用いて異なる土壌条件でのリン酸の可給性について検討し、たい肥の有効活用の一助とする。
[成果の内容・特徴]
1. 各たい肥に含まれるリン酸の大部分は2.5%酢酸で抽出されるカルシウム型が主体とみられるが、水で抽出される水溶性リン酸の比率は4.9〜26.7%とたい肥の種類によって違いがあり、リン酸とカルシウムの結合形態が異なることが示唆される(表2)。
2. コマツナに対しリン酸成分量で過リン酸石灰と同量のたい肥を施用すると、灰色低地土においては採卵鶏ふんたい肥を除く各たい肥区で過リン酸石灰以上のリン酸吸収量を示す。黒ボク土においては灰色低地土に比べて、たい肥の種類による違いが大きくなる(図1)。
3. たい肥由来リン酸吸収量は水溶性リン酸量と関係があり、水で抽出される比率が多いたい肥ほどたい肥由来吸収量が多い傾向がある。特に黒ボク土ではその傾向が顕著である(図2)。
[成果の活用面・留意点]
1. 試験に用いた土壌は、灰色低地土(古川農試、pH(H2O)5.3、Truogリン酸105mg/kg、リン酸吸収係数7.3g/kg)、黒ボク土(鳴子町川渡、pH(H2O)5.3、Truogリン酸153mg/kg、リン酸吸収係数17.0g/kg)の2点である。
2. たい肥は全て完熟と判断できるものを供試した。
3. 作期の短い作物に対するたい肥リン酸の肥効を考慮する目安となる。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:たい肥等有機物・化学肥料適正使用指針策定調査
予算区分:国補(土壌機能増進事業)
研究期間:2000〜2004年度
研究担当者:瀧典明、熊谷千冬、畑中篤