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航空機ハイパースペクトル画像による水稲の受精籾数の推定


[要約]

 登熟中期に撮影した航空機ハイパースペクトル画像から赤色(655nm)バンドとレッドエッジ(726nm)バンドを用いた重回帰モデルにより水稲の受精籾数を広範囲に推定できる。

[キーワード]

ハイパースペクトル画像、赤色バンド、レッドエッジ、重回帰モデル、受精籾数

[担当]宮城古川農試・土壌肥料部
[連絡先]電話 0229-26-5107、電子メール DohiG@faes.pref.miyagi.jp
[区分]東北農業・生産環境
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 冷夏の影響で発生した水稲の障害不稔の被害状況を広域的に把握するためには、リモ−トセンシング手法が有効であり、その活用が期待されている。そこで、登熟中期の段階で収量の制限要因の一つである受精籾数を被害尺度とし、航空機で撮影した分光反射スペクトルの画像から受精籾数の面的な推定を検討する。
[成果の内容・特徴]
1. 登熟中期のハイパースペクトル画像は、障害不稔が発生した稲から生育量や生育の進みに差がある稲まで、いろいろな生育の稲が混在した状態で撮影されている。また、平成15年の障害不稔は出穂期が早いものほど不稔が発生している特徴がある。このため、画像から受精籾数を推定するには、生育量を反映している赤色域・近赤外域のバンドの反射率に加えて、生育ステージに関連するレッドエッジ域の反射率の1次微分値を組み合わせた画像解析が有効である(図1、表1)。
2. 水稲品種「ひとめぼれ」のu当たり受精籾数は、赤色バンド(655nm)反射率とレッドエッジ(726nm)反射率の1次微分値からなる下記の重回帰モデル式から推定でき、推定誤差(RMSE)は26(×100粒/m2)である(図2)。
Y=1621λ655nm+40707λ’726nm−278  (R2=0.81)
ただしY=m2当たり受精籾数(×100粒)、λは反射率、λ’は反射率の1次微分値
3. 航空機ハイパースペクトル画像から広域的な受精籾数の分布図を作成できる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
1. 供試した航空機ハイパースペクトル画像は、出穂後20〜35日に相当する登熟中期に高度1400mからスペクトルセンサーAISA(400nm〜1000nm、66バンド、地上解像度1.5m;株式会社パスコ)で空撮したものである。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:大区画ほ場における簡易な土壌・作物体計測手法の開発と生育診断手法の策定
予算区分:県単
研究期間:2003年度
研究担当者:佐々木次郎、関口 道、洲浜智幸(株式会社パスコ)