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復田時の不耕起、無代かき移植栽培における水質汚濁物質負荷の特徴


[要約]

 水稲不耕起栽培は代かき濁水が発生しない水質保全型栽培技術と考えられるが、継続すると表層に集積する有機物からの水質汚濁物質の負荷が大きくなるので、田畑輪換体系に導入するなど、表層に有機物を集積させないことにより水質保全効果が高められる。一方、無代かき栽培の水質保全効果は復田後の年数にかかわらず安定している。

[キーワード]

不耕起、無代かき、水質、田畑輪換、窒素、懸濁物質、わら

[担当]秋田農試・生産環境部・環境調和担当
[連絡先]電話 018-881-3330、電子メール hisatomi@pref.akita.lg.jp
[区分]東北農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 閉鎖水系に位置する水田では水質汚濁物質の排出を抑制することが求められる。水稲不耕起、無代かき移植栽培は、代かき濁水を生じないので環境保全型生産技術として期待されているが、しかし、明確な水質保全効果が得られない場合もある。特に、不耕起栽培においては田面表層に集積する有機物の影響が考えられる。そこで、畑作後に不耕起、無代かき移植栽培を導入した場合の3年間の調査により、復田時における不耕起、無代かき栽培の水質保全効果を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
1. 無代かき栽培は、復田初年目の場合、用水中の懸濁物質(SS)、全窒素(T-N)が水田で浄化され、その後も水質汚濁物質の差引排出量は代かき栽培に比べて同等以下となる(図1)。
2. 不耕起栽培の場合、復田3年目まで安定したSSに対する浄化効果が認められるが、復田2年目の全有機態炭素(TOC)およびT-N差引排出量は代かきと同程度となり、3年目では代かきより大きくなる(図1)。
3. 不耕起栽培の場合、復田後3年間における水稲栽培期間中のSSおよびT-N差引排出量の総計は代かき栽培よりも小さくなるが、TOCは大きくなる(表1)。無代かき栽培の場合、いずれの水質汚濁物質の差引排出量も代かき栽培より小さくなる。
4. 不耕起栽培の場合、代かきから移植時に用水中の水質汚濁物質を水田で浄化するが、復田後3年目の6〜7月では表層に集積した有機物由来と考えられるTOCおよびT-Nの差引排出量が代かき水田よりも大きくなる(図2)。従って、不耕起栽培を田畑輪換体系に導入することは、表層へ有機物が集積することを妨げるので、有機物に由来する水質汚濁負荷を抑制して不耕起栽培の水質保全効果を強化する。
5. 無代かき栽培は、代かき時の負荷がなく、移植時以降は代かき栽培に似た排出量となるので、水質保全効果が安定している(図2)。
[成果の活用面・留意点]
1. 八郎潟干拓地内の透水性の低い重粘土水田における調査結果であり、水質汚濁物質負荷のほとんどは表面排出である。
2. 代かき時に、用水中の水質汚濁物質濃度が高くなる循環水系を利用した水田の調査結果である。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:閉鎖水系水田地帯における環境負荷物質の動態と環境保全機能の定量的解明
予算区分:指定試験
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:原田久富美、太田健、村上章、進藤勇人、小林ひとみ、藤井芳一