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黒ボク水田土壌のケイ酸供給力評価法


[要約]

 黒ボク水田土壌のケイ酸供給力評価法として、中性リン酸緩衝液抽出法が適用可能である。ただし、黒ボク土とそれ以外の土壌のケイ酸供給力を比較することはできない。

[キーワード]

ケイ酸、水稲、黒ボク土、分析法

[担当]山形農試・庄内支場・水田技術研究部
[連絡先]電話 0235-64-2100、電子メール andotad@pref.yamagata.jp
[区分]東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 山形県最上・北村山地域の黒ボク水田地域では、水稲のケイ酸含有率が低く(成熟期の茎葉のケイ酸含有率7〜8%)、ケイ酸肥料の施用効果が判然としない問題が指摘されている。中山間地における水稲栽培の安定化にはケイ酸施用が有効であると考えられるが、黒ボク水田土壌における適正なケイ酸供給力評価法が提案されていない。
 そこで本研究では、黒ボク水田土壌のケイ酸供給力評価法として最も適正な分析法を選定することを目的とした。
[成果の内容・特徴]
1. 成熟期における水稲茎葉のケイ酸吸収量は土壌により大きく異なる(図1)。黒ボク土では、非アロフェン質黒ボク土でケイ酸吸収量が低く、アロフェン質黒ボク土で高い傾向にある。
2. 可給態ケイ酸含量分析値と水稲茎葉のケイ酸含有率およびケイ酸吸収量の間の相関関係は、たん水保温静置法で最も相関係数が低いが、他の3つの分析法の相関係数は同程度に高い。しかし、逐次上澄み液法や易溶出ケイ酸量は操作が煩雑で時間がかかるという難点があるため、中性リン酸緩衝液抽出法が最も適当である。
3. 中性リン酸緩衝液抽出法における分析値と成熟期の水稲茎葉ケイ酸含有率および吸収量の間には、黒ボク土とそれ以外で区分することで土壌タイプごとに密接な正の相関関係が認められ、傾きの異なる回帰直線式が得られる(図2)。したがって、黒ボク水田土壌のケイ酸供給力評価法として中性リン酸緩衝液抽出法が適用可能である。
[成果の活用面・留意点]
1. ケイ酸施用の要否判定基準を黒ボク土とそれ以外の土壌とで別々に策定する必要がある。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:水田土壌における可給態ケイ酸施用技術の確立
予算区分:受託
研究期間:2003年度
研究担当者:安藤正