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転換畑における潜在的酸性硫酸塩土壌による生育障害と土壌の簡易診断


[要約]

 潜在的酸性硫酸塩土壌を下層にもつ水田を転換したアスパラガスほ場の調査例に よると、転換初年目では生育に異常が見られないが、土壌の酸性化が徐々に進行して、2 年後に生育障害が発生する。事前対策が重要であるとの判断から検土杖を用いた潜在的酸 性硫酸塩土壌の簡易診断法を示す。

[キーワード]

潜在的酸性硫酸塩土壌、アスパラガス、水田土壌、転換畑、土壌酸性

[担当]福島農試・冷害試験地
[連絡先]電話 0242-62-3606、電子メール noushi.reigai@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 硫化物を含有するいわゆる潜在的酸性硫酸塩土壌を下層にもつ水田は、畑地に転換されると土壌が硫酸酸性となり、作物の生育に障害を及ぼすことがある。この場合、土壌pHの低下が下層で大きいことなどから、障害発生の予測が難しく、発生後の対策は、非常に困難になるので、これらの土壌の存在を予測し、事前に対策をとることが重要である。米の生産調整の推進などによって、新たに転換される水田が増加し、転換畑において潜在的酸性硫酸塩土壌による障害が発生している。そこで、アスパラガス畑を例にして、土壌の酸性化の様相と生育障害の実例を示すとともに、潜在的酸性硫酸塩土壌の簡易診断法を示し、被害防止の参考にする。
[成果の内容・特徴]
1. 潜在的酸性硫酸塩土壌を下層土にもつ水田を転換した初年目のアスパラガスほ場では、生育障害がみられないが、保温静置法による土壌酸性化の予測から、将来、酸性による生育障害が発生すると推測される(表1)。
2. 潜在的酸性硫酸塩土壌を下層土にもつ水田を転換して、転換2年目のアスパラガスほ場では、土壌の酸性化が進み、生育障害が発生することがあり、土壌pHの低下は下層ほど大きい(表2)。
3. 潜在的酸性硫酸塩土壌は、検土杖を用いた土壌採取による簡易な方法で診断できる。つまり、診断しようとする深さに、検土杖を差し込み、杖に保持された幅10cmの土壌(重さ7〜8g)をシャーレに採取して(写真1)、ほぼ等量の脱イオン水を加えて、好気的条件下で30℃で保温静置すると、30日後には、安定したpHが得られる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
1. ここで示した転換畑の酸性化の様相は、具体的事例であり、潜在的酸性硫酸塩土壌におけるpH の低下の程度、期間はほ場の条件により大きく異なり、しかも、通常、被害の発生は、不均一である。
2. 保温静置期間中に、シャーレ中の水分が減少するので、5日に1回程度保水する。
3. 酸性硫酸塩土壌は、保温静置後のpHが4以下の土壌とされているが、潜在的酸性硫酸塩土壌の場合は、転換後の作物の生育を考慮して判断する必用があるので、この基準にはこだわらない。
4. 潜在的酸性硫酸塩土壌は、一般的には排水不良地帯に存在するので、調査時には、ほ場の排水状況に留意する。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:転換畑における潜在的酸性硫酸塩土壌の問題
予算区分:県単
研究期間:2003年
研究担当者:菅家文左衛門