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数年に一度の地域一斉防除で水稲初期害虫を防除できる


[要約]

 箱施用殺虫剤による地域一斉防除を行うと、岩手県では水稲初期害虫であるイネドロオイムシ、イネミズゾウムシを2〜4年間、要防除水準以下に抑制できる。また、この技術を導入するために、翌年の防除要否の判断基準を明確にする。

[キーワード]

水稲初期害虫、防除要否判断、低コスト化、隔年防除

[担当]岩手農研セ・病害虫部・病理昆虫研究室
[連絡先]電話 0197-68-4424、電子メール j-goto@pref.iwate.jp
[区分]東北農業・生産環境(病害虫)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 水稲初期害虫であるイネドロオイムシ、イネミズゾウムシは、年1回の発生であるため、個体密度は急激には増加しない。これらの初期害虫は防除が徹底され、県内の発生密度は著しく低下したが、現場では依然として葉いもちを同時防除できる殺菌殺虫剤を毎年使用している。このような過剰防除を回避するために、初期害虫の当年の発生密度から翌年の発生量を予測し、必要時にのみ防除するための判断基準を明確にする。
[成果の内容・特徴]
1. 箱施用殺虫剤により水稲初期害虫の個体密度を低下させると、その後要防除水準に達するまで3〜5年を要するので、2〜4年間は無防除を継続できる(図1、図2)。
2. イネドロオイムシは産卵盛期の卵塊数3個以上/25株、イネミズゾウムシは侵入盛期の成虫数3頭以上/25株見られた場合、翌年防除を行う(式1、図3)。この場合、イミダクロプリド、フィプロニルなど両害虫に効果の高い殺虫成分を含む箱施用剤を使用する。
3. 発生密度調査は、畦畔から約2m入った場所から連続25株を調査する。調査時期は、県南部5月下旬〜6月上旬、県央部6月上〜中旬、県北・山間部6月中〜下旬を目安とする。
[成果の活用面・留意点]
1. 活用面
(1) 不要な殺虫剤の使用を削減することでイネの低コスト栽培の一助となる。
(2) 農薬投下成分数が限定される特別栽培において、殺虫剤を一成分除いた防除体系を提示でき、いもち病やカメムシ類の異常発生時の追加防除にも対応可能となる。
(3) 同系統薬剤を毎年使用するために生じる薬剤感受性低下害虫の出現を防止できる。
(4) 水田生態系への影響を少なくできる。
2. 留意点
(1) 防除に際しては、無防除圃場が点在しないよう、広域で一斉に防除を行う。
(2) 発生密度調査は毎年実施する。発生密度は地域内でもばらつきがあるので、数カ所の水田で調査する。
(3) 春期の気象経過により調査時期が大きく変動することが予想される場合は、リアルタイムメッシュの水稲病害虫発生予察を利用して適期に調査する。
(4) 万一、箱施用剤による防除を実施しない年に、当年の要防除水準(イネドロオイムシ卵塊数13個/25株、イネミズゾウムシ成虫数8頭/25株)を超える密度に達した圃場は、水面施用などの防除技術で対応する。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:水稲初期害虫の隔年防除技術の確立
予算区分:植物防疫
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:後藤純子
発表論文等:1)大友・飯村(1997):北日本病虫研報48:164-167