全量炊飯型香り米水稲新品種候補「青系香144号」の育成
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[要約] |
水稲「青系香144号」は、全量炊飯型の香り米で、育成地では中生に属する粳種である。炊飯米は細長く特有の香りがあり、調理飯などに利用でき、地域興しなどの素材としての需要が期待されることから、青森県の認定品種に指定される予定である。
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[キーワード] |
イネ、青系香144号、新形質米、全量炊飯型香り米、認定品種
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[担当]青森農林総研・水稲育種部
[連絡先]電話 0172-52-4312、電子メール yoichi_kawamura@ags.pref.aomori.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい] |
近年の食生活の変化や食品の機能性に対する関心の高まりなどから、消費者の米に対する要望は多様化してきている。そこで、青森県では全国に通じる良食味品種の育成のほか、米の新規需要の開拓や地域の特色ある米作りの素材として、玄米形質や利用法に特徴のある新形質米品種の育成を行ってきた。
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[成果の内容・特徴] |
1. |
「青系香144号」は、全量炊飯型香り米品種の育成を目標に、1990年に青森県農業試験場(現青森県農林総合研究センター)において、「関東154号(サリークイーン)/ハツコガネ」のF3個体を母、「ふ系143号(ヤマウタ)」を父として人工交配を行った後代から育成された品種である(表1)。 |
2. |
出穂期・成熟期は「むつほまれ」に比べて2日程度遅く、育成地では“中生”に属する(表1)。 |
3. |
稈長は「むつほまれ」並の“短稈”で、穂長はやや長く、穂数が多く、草型は“偏穂数型”である。倒伏抵抗性は“中”で「むつほまれ」より弱い(表1)。粒着密度は“中”で「むつほまれ」よりやや疎粒である。 |
4. |
いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia”と推定され、圃場抵抗性は葉いもち・穂いもちともに“強”で「むつほまれ」より強い(東北地域新基準では葉いもちは“極強”)。障害型耐冷性は“強”、穂発芽性は“やや難”である。収量性は低く、「むつほまれ」の8割程度である(表1) |
5. |
玄米千粒重は19g程度で「むつほまれ」より小さく、玄米の大小は“小”、玄米の形状は“細長”で、玄米品質は“上中”である。タンパク質含量及びアミロース含量は「むつほまれ」並である。炊飯米は、やや細長く、「むつほまれ」に比べ粘りがやや強く軟らかく、ポップコーンのような特有の香りがある。(表1・2) |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
炊飯米の特徴から、白飯のほかピラフ・リゾット等の調理飯にも利用でき、地域興しの素材としての需要が期待される。 |
2. |
は種量は、籾千粒重が小さいので、中苗育苗の場合、箱当たり85g(乾籾)程度とする。 |
3. |
倒伏抵抗性が“中”であるため、多肥栽培は避ける。 |
4. |
障害型耐冷性は“強”であるが、幼穂形成期以降の低温時には深水管理を実施し幼穂の保護に努める。 |
5. |
玄米千粒重が小さいので、玄米選別は原則として1.7mmで行う。 |
6. |
玄米の形状は“細長”であるが、精米時の砕米は「むつほまれ」並である。 |
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:水稲良食味品種早期開発事業及び第II期水稲良食味品種早期開発事業
予算区分:県単
研究期間:1990〜2003年度
研究担当者:三上泰正、高舘正男、横山裕正、川村陽一、小林渡、舘山元春、前田一春、工藤龍一、中堀登示光、小山田善三、工藤哲夫
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