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低アミロース米水稲新品種候補「山形84号」の採用


[要約]

 「山形84号」は熟期が早生の低アミロース米である。「はえぬき」並の良食味で、収量は「はなの舞」に優り、品質もやや優る。2004年度から山形県で山間から中山間地域を対象に認定品種として採用する。

[キーワード]

イネ、新品種、山形84号、低アミロース米、良食味、認定品種

[担当]山形農試・水田営農研究部
[連絡先]電話 023-647-3500、電子メール asanomen@pref.yamagata.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 多様化した米の流通・消費に対応した特色のある米(新形質米等)が求められている。また、山間〜中山間地域で栽培されている「はなの舞」は栽培面積が減少し、近年は「あきたこまち」の栽培面積が増加しているが低温年は冷害の危険が高いため耐冷性の強い良質・良食味品種が求められている。そこで、山間から中山間地域における安定生産を図るために早生・耐冷性の強い低アミロース米「山形84号」を認定品種として採用する。
[成果の内容・特徴]
1. 山形県内各地の奨励品種決定調査の結果では、出穂期は「はなの舞」並、成熟期は「はなの舞」より2日ほど遅い早生で、低温年における県内の山間部でも9月末までには成熟期に達する(表1)。
2. 稈長は「はなの舞」より短い。穂長は「はなの舞」よりやや短く、穂数は多い(表1)。
3. 収量は、「はなの舞」より優り、品質はやや優る(表1)。低アミロース米特有の玄米の白濁は少ない。食味は、「はなの舞」よりも粘りが強く、「はえぬき」並の良食味である(表2)。「ミルキークイーン」ほどに粘りが強すぎず、「スノーパール」に比べて餅臭がほとんどない。
4. 穂いもちのほ場抵抗性は“弱”だが、葉いもちのほ場抵抗性は“やや強”であり、慣行防除を行った際のいもち病発生は少ない(表1)。
5. 低温年においても不稔の発生が少なく、耐冷性は極強である(表1)。
6. 精米のアミロース含量は12%前後で、登熟期の気温による変動が小さく、安定している(表3)。
[成果の活用面・留意点]
1. 普及面積は500ha程度が見込まれる。「あきたこまち」の不適地栽培が解消され、冷害の危険回避による良質米の安定生産と品質の向上が図られる。
2. 葉いもちのほ場抵抗性は“やや強”だが、穂いもちのほ場抵抗性は“弱”なので、いもち病の適正適期防除を心がける。
3. 品質(乳白)・食味の低下、いもち病の発生を助長する多肥栽培は行わない。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:水稲奨励品種決定調査
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:浅野目謙之、古賀千博、安藤正、今川彰教、松田裕之