研究所トップ研究成果情報平成15年度

玄米の白濁が少なく、良食味の低アミロース米水稲新品種候補「山形84号」の育成


[要約]

 「山形84号」は、葯培養突然変異由来の低アミロース系統で、早生、短稈中間型、耐倒伏性“強”、葉いもち“やや強”、穂いもち“弱”、耐冷性“極強”で、炊飯米の粘りが強く良食味である。また、精米のアミロース含量が12%前後で安定し、玄米の白濁が少ない。

[キーワード]

イネ、新品種、山形84号、低アミロース、耐冷性、良食味、白濁

[担当]山形農試・庄内支場・水稲品種開発部
[連絡先]電話 0235-64-2100、電子メール chubam@pref.yamagata.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 近年、低アミロース米は飯米の粘りが強く、食味特性が良好であることから、加工・業務用を含めて作付けが増加し、北海道から九州までそれぞれの地域に適応した品種が育成されている。
 米の主産地県としての地位向上を図るためには、多様化、高度化する消費者ニーズを先取りした独自品種の開発が必要である。このような中、中山間地の食味向上やこれまでの良食味米を超える米として、注目されている低アミロース米を育成する。
[成果の内容・特徴]
1. 「山形84号」は、1995年に山形県立農業試験場庄内支場において、「庄1658(葯培養突然変異由来の低アミロース系統の後代)」を母、「山形63号」を父として人工交配し、その後代から育成した系統である。
2. 出穂期、成熟期ともに「はなの舞」より1日程度遅く、育成地では“早生”である。
3. 草型は、“短稈・中間型”で、「はなの舞」に比べ、稈長は明らかに短く、穂数は並である。耐倒伏性は「はなの舞」より強い“強”である(表1)。
また、穂の形状は、粒着密度が「はなの舞」より密で“やや密”、芒は無い(表1)。
4. いもち病の真性抵抗性遺伝子型は、Piiと推定され、圃場抵抗性は、葉いもちは“やや強”、穂いもちは“弱”である。耐冷性は“極強”、穂発芽性は“中”である(表1)。
5. 収量性は、「はなの舞」並で、玄米千粒重は1g程度重い。玄米の外観品質は「はなの舞」並だが、低アミロース品種・系統に多くみられる玄米の白濁は少ない(表1)。
6. 食味関連理化学特性では、精米粗タンパク含量はやや高く、精米のアミロース含量は12%前後と低く、登熟温度による変動が小さい(表1、図1)。
7. 「はえぬき」を基準品種とした食味試験では、炊飯光沢及び粘りが優り、「はえぬき」並の良食味である(表1)。特に、放冷したおにぎり状態でも粘りが強く、良食味である。
[成果の活用面・留意点]
1. 早生、低アミロース、耐冷性極強、良食味品種として2004年に山形県で奨励品種(認定)に採用し、最北地域を中心に山間から中山間部に普及を図る。なお、普及見込み面積は500haである。
2. 短稈で倒伏には強いが、多肥栽培は品質および食味特性を低下させることから、適正な肥培管理につとめる。
3. 穂いもちの圃場抵抗性は、“弱”であるので、移植時の箱施用剤使用など適期、適正防除につとめる。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:需要増進型水稲品種の開発
予算区分:県単
研究期間:1995〜2003年度
研究担当者:櫻田博、結城和博、佐野智義、佐藤久実、中場理恵子、横尾信彦、本間猛俊、中場勝、佐藤晨一、宮野斉、水戸部昌樹、佐藤久喜、渡部幸一郎