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穂発芽性難水稲糯系統の効率的な選抜手法


[要約]

 水稲糯品種の穂発芽性難易の組合せの集団に、早期3世代にわたり浸種処理(穂発芽易個体除去処理)を行って選抜することによって、後代の集団は、穂発芽性難個体の出現頻度が高くなり、育成の効率化がはかられる。

[キーワード]

イネ、糯、穂発芽性、浸種処理、効率化

[担当]山形農試・庄内支場・水稲品種開発部
[連絡先]電話 0235-64-2100、電子メール chubam@pref.yamagata.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 現在、山形県の奨励品種となっている糯品種は、穂発芽性が易で年によっては品質低下をもたらす要因となっている。そこで、現場からのニーズに応えるため、穂発芽性難系統を効率的に育成する方法として、冬季温室を利用した世代促進による早期世代における選抜手法を開発する。
[成果の内容・特徴]
1. 下記の手法により、水稲糯の穂発芽性難系統のより確実な選抜が可能となり、品種育成が効率化する。
[処理の方法]
ア. 成熟期に達した種子をお茶パック等に入れ、30〜35℃の恒温器で48時間浸種
イ. ハトムネ状態以上に発芽した種子をピンセットで除去
ウ. 通常の休眠打破(50℃、72時間)を行い、浸種・催芽・播種・育苗
エ. ア〜ウをFからFの集団養成に進むとき、FからFの集団養成(冬季温室)に進むとき、FからFの個体選抜に進むときに実施
2. 浸種処理をF、F、Fの3世代にわたり行ったF集団の個体ごとの生育は、無処理の集団に比べて、穂発芽はしにくくなり、他の形質は、ほとんど差がない(表1、図2、図3)。穂発芽性難の個体の出現頻度が高く、難系統を選抜しやすい。
3. 浸種処理は、発芽状態(ハトムネ状態以上)が肉眼で確認でき、穂発芽性難易の差が大きい30〜35℃、48時間処理が適当である(表2)。
[成果の活用面・留意点]
1. 穂発芽性は登熟温度等により変動することもあることから、育成地の特性のみならず、交配する場所で事前に栽培し、穂発芽性検定をしてから、母本として活用することが望ましい。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:需要増進型水稲品種の開発
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:中場勝、渡部幸一郎、結城和博、佐藤久実、水戸部昌樹