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宮城県における平成15年の水稲障害不稔の発生と要因


[要約]

 平成15年は7月中下旬の低温の影響によって障害不稔が発生したが、出穂期の早い作型や早生品種での被害が大きかった。幼穂長3〜10cmの時期の平均気温が不稔歩合と相関が高く、この時期の低温が障害不稔の発生を引き起こした。

[キーワード]

イネ、障害不稔、出穂期、減数分裂期

[担当]古川農試・水田利用部
[連絡先]電話 0229-26-5101、電子メール hknosi@faes.pref.miyagi.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 2003年は6月下旬から長期にわたる低温寡照で経過し、障害不稔が発生し作柄低下の大きな原因となった。そこで,本年の障害不稔発生について、出穂期・品種・気象要因について検討した。
[成果の内容・特徴]
1. 出穂期別の不稔発生状況
8月上旬に出穂した生育ステージの早いもので不稔歩合が極めて高く、出穂が遅くなるにつれて不稔歩合は急激に低下した(図1)。この傾向は耐冷性に大きな差のある、「ひとめぼれ」(極強)・「ササニシキ」(やや弱)でも同様であった。
8月10日までに出穂したものの不稔歩合は,ひとめぼれで20%以上,ササニシキで35%以上と高かった。8月15日以降は,不稔歩合が低くなりササニシキは20%以下,ひとめぼれは5%以下であった。
2. 品種別の不稔発生状況
本県奨励品種の品種別の不稔発生状況は、早生品種での不稔発生が著しく中生・晩生品種では軽微であった。また、同じ熟期の品種で比較した場合、耐冷性の強いもので不稔率が低かった(図1、2)。
3. 幼穂伸長期間を2つの期間に分けた場合,幼穂長3〜10cmの期間の平均気温と不稔率の関係に高い相関が見られ(図3、表1)、この期間の低温が障害不稔を引き起こしたと考えられた。幼穂長を基準とすることで品種による幼穂伸長速度の差の影響を受けず,気温と不稔籾発生の関係を正確に評価できことが報告されているが,平成15年の障害不稔発生事例にも,良く適合した。
[成果の活用面・留意点]
1. 障害不稔発生が懸念される場合の、普及指導上の参考資料となる。
2. 幼穂伸長期間の長短にかかわらず,障害不稔発生危険期を把握できる。
3. 本成果は,宮城県古川農業試験場の標準的な施肥法・水管理による栽培試験の解析結 果を基に作成された。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:水稲作況試験
予算区分:県単
研究期間:2003年度
研究担当者:佐藤泰久、佐々木美和