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1次分げつ主体となる深水処理による水稲の収量、整粒歩合および食味向上


[要約]

 移植期から5葉期までと8.5葉期から9.5葉期までの深水処理により、主茎および3から6号の1次分げつ主体に穂数が確保され、収量、整粒歩合、味度値が向上し、玄米たんぱく質含有率が低下する。

[キーワード]

整粒歩合、玄米たんぱく質含有率、味度値、深水処理、1次分げつ、葉面積指数、非構造性炭水化物量

[担当]秋田農試・作物部・栽培生理担当
[連絡先]電話 018-881-3336、電子メール k-sato@agri-ex.pref.akita.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 現在、栽培現場から整粒歩合が高く、食味の良い安定した高品質・良食味米生産技術の確立が求められている。中苗「あきたこまち」で、主茎および3から6号の1次分げつは2次分げつに比べ収量、整粒歩合が高く、玄米たんぱく質含有率が低いことが報告されている(金ら,日本作物学会東北支部報,46,2003年)。また、穂揃後20日間の1籾当たりの利用可能炭水化物量と登熟歩合の間に正の相関関係があることを報告している(森田ら,日作紀66(別1),1997年)。そこで、深水処理で主茎および3から6号の1次分げつを主体に穂数を確保することで、玄米の収量、整粒歩合を高め、たんぱく質含有率を低下させることができるかどうかについて検討した。
[成果の内容・特徴]
1. 水深は、移植期から5葉期頃までは最上位完全展開葉の葉鞘が3から5cm水没する程度の深水とし、5葉期頃から8.5葉期頃までは浅水、8.5葉期頃から9.5葉期頃までは約15cmの深水とする。その後は直ちに中干しを実施し、幼穂形成期後は慣行栽培と同様の水管理を行う。
2. 深水処理により1次分げつの2号の発生が抑制され、2次分げつの発生、有効化が慣行よりも少なく、主茎および3から6号の1次分げつ主体に穂数が確保できる(表1)。
3. 深水処理により穂揃期の止葉の葉色、層別高さの相対照度は同程度であるが、葉面積指数は向上する(表2、図1)。
4. 深水処理により、稈・葉鞘の非構造性炭水化物量が向上し、1籾当たり利用可能炭水化物量が多くなる(表2)。
5. 深水処理により、収量、整粒歩合、味度値が向上し、玄米たんぱく質含有率が低下する(表3)。
[成果の活用面・留意点]
1. 葉齢3.5葉の中苗、「あきたこまち」を用い、栽植密度22.2株/m2、4個体/株植え、全層施肥、減数分裂期追肥の条件で試験した。
2. 畦畔からの漏水の防止が必要である。
3. 深水処理時に表層剥離等が多く見られたら水を入れ換える。
4. 2002年の登熟期間の気象は前半低温寡照、後半高温多照、2003年は低温寡照であり、 高温登熟時のデータは無い。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:良食味米品種の栽培管理技術による高品質生産
予算区分:県単
研究期間:2000〜2004年度
研究担当者:佐藤馨、三浦恒子、金和裕、柴田智、田口奈穂子、児玉徹