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葉色が褪色した「コシヒカリ」の夏季冷温条件下における追肥効果


[要約]

 葉色が急激に褪色した「コシヒカリ」は最高分げつ期〜分げつ終止期につなぎ肥をして、減数分裂期に穂肥(以下「つなぎ肥+穂肥」)を、また穂肥のみの場合は穂ばらみ期直前に再度追肥(以下「穂肥2回追肥」)を行うと、夏季冷温条件下であっても未熟粒の発生が抑えられ品質が維持、向上する。また「つなぎ肥+穂肥」は収量も向上する。

[キーワード]

イネ、コシヒカリ、葉色、冷温少照、栄養管理、追肥

[担当]福島農試・会津地域研究支場・水稲畑作研究室
[連絡先]電話 0242-82-4417、電子メール nousi.aizu@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 2003年会津平坦地域の「コシヒカリ」は葉色が6月下旬以降に急激に褪色したが、同時期より冷温条件となったため、農家および農業団体から追肥、栄養管理の対応が求められた。このため葉色の低下を抑える栄養管理により品質の維持、向上を図る。なお、平年の施肥法は減数分裂期に窒素2kg/10a施用であるが、葉色の褪色が著しい時は適宜追肥を行い葉色の維持を図っている(図1)。
[成果の内容・特徴]
1. 褪色の要因は、旺盛な初期生育により土壌中窒素の吸収が早かったためと推定される(データ省略)。
2. 「つなぎ肥+穂肥」により葉色は平年並まで回復する。また「穂肥2回追肥」により登熟期間の葉色は標準栽培をやや上回る(図1)。
3. 「つなぎ肥+穂肥」により籾数が増加し、登熟歩合は低下するが標準栽培並〜やや低い未熟粒率となり、品質が確保され収量も高まる。また「穂肥2回追肥」は登熟が向上し品質が向上する(表2)。
[成果の活用面・留意点]
1. 会津平坦地域における葉色が褪色した標準栽培「コシヒカリ」対象であるが、障害不稔発生の恐れが少ない本地域では、夏季冷温条件下でも適応できる。
(標準窒素施肥体系:基肥3kg/10a+減数分裂期追肥2kg/10a)
2. 6月下旬の葉色が幼穂形成期の目標葉色下限36まで褪色した条件での結果である。
3. 2003年の「コシヒカリ」は幼穂形成期の生育から出穂期の生育量を診断すると、褪色は著しかったものの通常の穂肥でも目標の穂数、m2籾数が得られ、稈長が短稈と予想された(表1)。
4. 合計追肥窒素量は3〜4kg/10aである。また、つなぎ肥(最高分げつ期〜分げつ終止期)により籾数過多となる場合がある。
5. 追肥の際は倒伏、いもち病の発生防止に努める。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:解析・予測技術開発試験
予算区分:県単
研究期間:2003年度
研究担当者:新田靖晃、齋藤弘文