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東北南部の水田畦畔におけるセンチピードグラスの定着法


[要約]

 水田畦畔等を被覆するセンチピードグラスの植栽方法は、10g/m2播種または25株/m2移植が最適である。また、畦畔雑草の抑制は、植栽1年目では劣るため除草を必要とするが、植栽2年目では被度が高まり、抑草効果が高い。

[キーワード]

水田畦畔、グラウンドカバープランツ、センチピードグラス、省力化

[担当]福島農試・種芸部・稲作研究室
[連絡先]電話 024-932-7785、電子メール nousi.aac@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 稲作に要する労働時間は、作業の機械化やほ場の大区画化により年々短縮傾向にあるが、畦畔管理技術はあまり進展していないことから、畦畔管理の省力化と景観保全を同時に図れるグラウンドカバープランツが注目を集めている。
 このため、イネ科の有望草種であるセンチピードグラスに注目し、水田畦畔への定着を図るため、直播法と移植法の播種量・栽植密度および管理法について検討する。
[成果の内容・特徴]
1. 直播法の最適な播種量は、被度が比較的高く、土壌の流亡が少なく、越冬後の枯死株も少ない10g/m2である(表1、図1)。また、草高は、直播法が移植法より低く経過する。
2. 移植法の栽植密度は、密になるほど被度が高く、土壌の流亡が少なく良好であるが、移植の労力を考慮すると最適な栽植様式は25株/m2(20cm×20cmの格子移植)である。
3. 畦畔雑草の抑制は、植栽1年目ではやや劣るため除草作業が必要である。しかし、植栽2年目では被度が高まり、雑草の発生が極めて少なく、抑草効果が高い(表1)。また、直播法では、手取り除草によって雑草と同時にセンチピードグラスが抜けてしまうことから、動力刈り払い機による刈り込みが適している。
4. センチピードグラスは、寒冷地ではほとんど出穂しないとされているが、植栽2年目の9月中旬から下旬に出穂する(表1)。
5. 初年目の管理作業としては、除草作業等が必要である。移植体系では手取り除草等で延べ63.5hr/a、直播体系では動力刈り払い機による刈り込み作業等で10.6hr/aを要する(表2)。
6. 直播法では、露地の気温が発芽適温に達する6月頃、移植法では、移植後の降水量が確保できる梅雨期間中が適期である。
[成果の活用面・留意点]
1. 草刈りの省力化や景観保全を図ると同時に、刈草の流亡・集積による水環境の悪化が心配される地域等での導入を図る。
2. 本成果は、センチピードグラスの寒冷地向け品種であるティフ・ブレアによる試験である。
3. 植栽する法面での雑草の発生を抑えるためには、基盤整備事業等で造成した新規造成畦畔が良い。また、既存の畦畔に植栽する場合は、水田畦畔除草剤を散布し、雑草の根部まで十分に枯殺してから行う。
4. 直播栽培では、降雨等で法面上部の種子が流亡しやすいことから、播種後の鎮圧を十分に行うか被覆資材等を活用し、種子の流亡を防止する。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:水田畦畔雑草の生態的防除技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:荒井義光、伊藤博樹
発表論文等:荒井(2003)日作東北支部報46:23-24