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黒毛和種における遺伝性内水頭症原因領域の解明


[要約]

 県内の黒毛和種に発生した遺伝性内水頭症について、胚移植による全きょうだい実験家系を作出し、発生の原因となる染色体領域を特定した。これにより、発生の可能性がある血統の牛について、DNAマーカーによる遺伝子診断が可能となった。

[キーワード]

黒毛和種、内水頭症、マーカー診断

[担当]岩手農研セ・畜産研究所・家畜工学研究室
[連絡先]電話 019-688-7315、電子メール toshi-suzuki@pref.iwate.jp
[区分]東北農業・畜産
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 1980年代後半、県内の黒毛和種において、出生時より起立不能や神経症状を伴い生後数日から数ヶ月で死亡する異常産子が発生し、病理的に先天性内水頭症と診断された。この発生の機序と原因は完全には解明されなかったが、特定の交配により発生が認められたことから遺伝的要因も示唆されていた。そこで、この原因遺伝子を特定するため、東北農業研究センターと共同で当時内水頭症を分娩した繁殖牛から胚移植により全きょうだい産子を作出し、その原因染色体領域を解析する。
[成果の内容・特徴]
1. 特定種雄牛産子のきょうだい交配により10頭の全きょうだいを得、そのうち5頭が内水頭症と診断された(図1,2)。この全きょうだい家系の全染色体を解析した結果、3番染色体の16.8cMから40.6cMに原因領域がマップされた(図3)。
2. 保因診断は、最低8つのDNAマーカー(セット例:AG0697、AG1415、AG2398、AG0698、AG0699、AG1214、AG1204、AG0429)で判定することができる(図3)。
3. これまで認められた内水頭症の大部分は、特定の血統の近親交配により発生した。
4. 発症個体の血統調査とDNA解析の結果から、内水頭症は常染色体単純劣性遺伝の様式をとることが判明した(図4)。
[成果の活用面・留意点]
1. 遺伝性内水頭症の原因遺伝子を保因しない後継牛を選抜することができる。
2. DNAマーカー診断は、その性質上特定の血統において原因染色体を受け継いでいるかを診断するものであり、全ての黒毛和種について応用できるものではない。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:肉用牛における経済形質とDNAマーカーとの連鎖解析
予算区分:国補(生産総合対策事業)
研究期間:1994〜2005年度
研究担当者:鈴木暁之、福成和博、児玉英樹、吉川恵郷