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黒毛和種繁殖牛の母性遺伝効果の改良により子牛出荷時体重が改善される


[要約]

 宮城県内の子牛市場における出荷時体重から推定した母性遺伝効果の遺伝率は0.21と高かった。また,母牛の母性遺伝効果の育種価と子牛市場出荷時の日齢体重の間には有意な正の相関が見られ,母性遺伝効果の改良により子牛の出荷時体重が増加する。

[キーワード]

黒毛和種牛、繁殖牛、子牛市場出荷時体重、母性遺伝効果、育種価

[担当]宮城畜試・酪農肉牛部・肉牛チーム
[連絡先]電話 0229-72-3101、電子メール inomata-ei787@pref.miyagi.jp
[区分]東北農業・畜産
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 宮城県内において黒毛和種繁殖牛の泌乳能力の遺伝的な改良は適切な指標がなく,進んでいないのが現状である。累積授乳量(分娩後13週)は,当試験場で調査した繁殖雌牛29頭の平均が434kgであり,日本飼養標準の黒毛和種哺乳量563kgより1kg/日以上も低かった。このことから従来の産肉能力の改良に加えて,新たな遺伝的能力の評価方法を検討することにより,泌乳能力等の改良を進める必要がある。繁殖経営において子牛市場出荷までの発育は経済上重要であり,泌乳能力や哺育能力に大きく関与し,この時期の子牛発育に影響を与える母性遺伝効果の解明が求められている。
[成果の内容・特徴]
1. 繁殖牛の泌乳量と子牛の増体量の関係を明らかにするため,宮城県内の公共牧場において授乳量と発育値の測定を行った。13週齢までの累積乳量は432.7kgであった(表1)。また,表2に示すように13週齢までの累積乳量と子牛DGの関係は,相関係数が0.70であり有意な正の相関関係が見られ,子牛の発育が授乳量により大きな影響を受けていると認められる。
2. 宮城県内全体の繁殖牛の母性遺伝効果を把握するため,みやぎ総合家畜市場の3年間にわたる累積データを用いて分析を行った。子牛の市場出荷時体重から推定した個体自身の直接遺伝効果の遺伝率(hA2)は0.24,母性遺伝効果の遺伝率(hm2)は0.21と高く,遺伝相関も0.17であり,同時に改良しやすい形質である(表3)。
3. 子牛の市場出荷時体重から推定した母牛の母性遺伝効果の育種価とその子牛の市場出荷時の日齢体重の間には有意な正の相関が見られ,母性遺伝効果の改良により子牛の市場出荷時体重の増加が図られる(図1)。
[成果の活用面・留意点]
1. 母性遺伝効果の育種価は,種牛性に優れた種雄牛造成や繁殖雌牛群造成のための指標とする。
2. 農家レベルでの交配計画や繁殖牛の更新に関する参考資料とする。
3. 枝肉形質との遺伝的連関の調査および改良目標の設定が必要。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:黒毛和種繁殖雌牛の母性遺伝効果を考慮した種牛性評価法の検討
予算区分:県単
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:猪股永治、石黒裕敏、千葉和義、伊藤敦
発表論文等:1)猪股ら (2003) 東北畜産学会 第53回大会口頭発表