研究所トップ研究成果情報平成15年度

新型ウシ胚移植器の活用により受胎率の向上と低コスト化が期待できる


[要約]

 二段式の特徴を持つ新型ウシ胚移植器は、現在我が国で広く用いられている既存の2種類の移植器に比べてウシ胚移植(ET)の受胎率向上が見込まれ、また諸経費の低コスト化が期待できる。

[キーワード]

新型ウシ胚移植器、ウシ胚移植(ET)、受胎率改善、低コスト化

[担当]秋田畜試 家畜繁殖部 受精卵移植担当
[連絡先]電話 0187-72-3874(直通)、電子メール Obara-tsuyoshi@pref.akita.lg.jp
[区分]東北農業・畜産
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 当場、大分畜試及びミサワ医科工業が共同開発した二段式の特徴を持つ新型移植器(ミサワ式)と我が国で広く用いられている既存の2種類の移植器(ノースガン式、カスー式)について、汚染物質の持込み、移植成績及び経済性を比較検討する。
[成果の内容・特徴]
1. 新型ウシ胚移植器の特徴
ステンレス素材で重さ32.7gと非常に軽く、使い捨てタイプとして使用する。排液口部分が二段式構造となっているため、移植部位まで排液口を隠した状態で誘導することが可能となる(表1、写真1)。
2. ET時の汚染物質の持込み試験
3種類のウシ胚移植器に生食を吸引した0.25mlストローを装着し、アデノシン(A4036,Sigma)で15,000RLUに人為的に汚染させた黄体期粘液へ各々5秒間浸漬。その後ストロー内生食を排液し、持ち込まれる汚染度についてルミノメーター(ATP法)で測定した結果、統計的有意差は認められないものの、ミサワ式の汚染度が最も低く(図1)、ET時の汚染物質の持込みを低減できることが示唆される。
3. 移植成績
体内由来胚99個を用いたミサワ式、ノースガン式及びカスー式の受胎率は、それぞれ65.0%、52.8%及び57.1%であり統計的有意差は認められないものの、ミサワ式が最も優れており受胎率の向上が見込まれる(表2)。
4. 経済性
各々の移植器について概ね耐用限度と考えられる100回使用時の経費について移植器代、付属品代、洗浄滅菌費及び人件費を考慮し試算すると、ミサワ式が最も経済性が高い(表3)。
[成果の活用面・留意点]
1. コスト削減のため、移植器内筒が外筒10本に対し2本なので、その保管に留意が必要である。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:新型ウシ胚移植器を用いた受胎率の向上
予算区分:県単
研究期間:2003年度
研究担当者:小原剛、相澤健一、千田惣浩、西宮弘、沼田恵、小西潤一
発表論文等:1)第19回東日本家畜受精卵移植技術研究会大会