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移行期(分娩前3週間)における乳牛へのタンパク質給与水準


[要約]

 経産牛、初産牛における移行期(分娩前3週間)のCP給与水準は、経産牛では充足率110%、飼料乾物中CP含量12%で乳量は安定し、繁殖成績及び疾病発生状況等に影響なく、初産牛では、充足率120%、飼料乾物中CP含量14%で乳量が多く、繁殖成績及び疾病発生状況等に問題はなかった。

[キーワード]

乳牛、移行期、蛋白質給与

[担当]福島畜試・酪農部、宮城畜試・酪農肉牛部
[連絡先]電話 024-591-1221、電子メール tikusi@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・畜産
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 近年、乳牛においては、経産牛、初産牛ともに分娩3週間前から分娩までは移行期と呼ばれ、乳牛の体内では分娩に向けて胎子の急成長や代謝機能の変化が起こるため養分要求量が急増するとともに、この時期の栄養摂取量は分娩後の乳量の立ち上がりや繁殖性などを左右するといわれている。しかし、タンパク質の給与水準はまだ確立されていないため、移行期の適正なタンパク質給与水準(日本飼養標準のCP要求量に対して経産牛では110%と140%、初産牛では100%と120%)を検討するとともに、産乳と繁殖に及ぼす影響を調査した。
[成果の内容・特徴]
1. 乾物摂取量は、経産牛、初産牛間に差は見られない。(表2)
2. 平均日乳量は、経産牛では充足率140%で多い傾向を示し、乳生産効率も高い。初産牛では有意な差は認められないが、充足率120%で多い傾向がみられる。(図1)
3. 泌乳期において体重の回復は、経産牛では110%より140%が、初産牛では100%より120%で遅い傾向にあり、産乳量が体重回復に影響すると考えられる。
4. 繁殖成績は、経産牛では、授精回数、受胎率は140%より110%で良好な成績を示す。しかし、初産牛では、受胎までの日数で120%が100%より長いほか差は認められない。(表3、4)
5. 移行期において、経産牛・初産牛ともに尿中への窒素排泄量及び蓄積量はCP充足率を高めると有意に多くなる。特に初産牛では、蓄積量に大きな差が見られる。(図2)
6. 移行期のCP給与水準は、経産牛で充足率110%、飼料乾物中CP含量として12%程度、初妊牛ではそれぞれ120%、14%程度が望ましいと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
1. 乳牛の移行期における適正なタンパク質給与により、適切な飼養管理ができる。
2. CP充足率を高めると、乳量が多く産乳に費やすエネルギーが大きくなるため、繁殖機能の回復が遅れたと考えられるので、泌乳期飼料のエネルギー含量を高めるなど、繁殖管理に注意が必要と考えられる。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:移行期の栄養水準が産乳と繁成績に及ぼす影響
予算区分:県単
研究期間:1999〜2002年度
研究担当者:阿部正彦、籠橋太史、遠藤孝悦、小林宏子1(1 宮城畜試)
協力分担:茨城畜セ、埼玉畜研、静岡畜試、岐阜畜研、京都畜研、鳥取畜試、熊本畜研、全酪技研、畜草研
発表論文等:
     阿部ら(2002.3)日本畜産学会第100回大会講演要旨 p56.
     富田ら(2004.3)日本畜産学会第103回大会講演要旨 p40.