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耕作放棄水田における黒毛和種の放牧利用技術


[要約]

 耕作放棄水田を全面耕起によりオーチャードグラス、ペレニアルライグラス、イタリアンライグラス等で草地化すると黒毛和種の牧養力は555CDと高度な放牧利用が可能である。また、パイプハウス廃材利用による電気牧柵方式では、放牧管理費用の低コスト化、作業の省力化が図れる。

[キーワード]

耕作放棄水田、放牧、電気牧柵、黒毛和種

[担当]福島畜試・草地飼料部、福島農業試・経営部
[連絡先]福島畜試:電話 024-593-1221、電子メール tikusi@pref.fukushima.jp
     福島農試:電話 024-932-7788、電子メール yamaki_satoshi_01@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・畜産
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 耕作放棄される水田の面積は、高齢化による労力不足等から年々増加しており、特に中山間地域では立地条件の悪さからその利用方法に苦慮している。そこで、耕作放棄水田における放牧利用技術を確立し、地域資源の有効活用と飼養管理作業の省力・低コスト化を目指す。
[成果の内容・特徴]
1. 耕作放棄水田を全面耕起更新により放牧地にすると牧養力は456〜608CD/haとなり、放牧地としての高度利用が可能である(表1、2、3)。
2. 排水条件が良い場所ではオーチャードグラス、ペレニアルライグラス、イタリアンライグラス、シロクローバ等の混播が可能であるが(表1、2)、悪い場所ではリードカナリーグラス、イタリアンライグラス、ペレニアルライグラスを播種する。
3. 放牧地化には電気牧柵が有効であり、パイプハウス廃材を用いると低コストな電気牧柵方式になる(表4、写真1)。
4. 放牧地の造成に係る費用は10aあたり14,700〜18,700円である(表4)。また、飼養管理にかかる1頭あたりの経費は42 %、1頭あたりの労働時間は59 %削減できる(表5)。
[成果の活用面・留意点]
1. 耕作放棄水田跡地で排水不良地は牧草定着、泥濘化防止のために明渠を掘るなどの排水対策を講じておく。
2. 播種後翌年は採草地として利用することで、蹄圧による牧草根の損傷を防ぎ、圃場の泥濘化防止が図れる。
3. 脱柵させないために、放牧前には電気牧柵への馴致を行い、必ず2頭以上で放牧する。また、子牛を放牧する場合は、電気牧柵の段数を増やす等の対策をとる。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:中山間地域の遊休農地、転作田等を活用した黒毛和種育成技術の確立 (4)中山間地域の肉用牛放牧技術体系の現地実証 2)転作田の放牧利用飼養体系の現地実証と経営経済評価
予算区分:国助成(地域基幹)
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:大槻健治、八巻聰、江畑明彦、渡辺有策