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夏秋どりに向くイチゴ四季成り性品種「なつあかり」及び「デコルージュ」


[要約]
「なつあかり」は四季成り性で、果実が大きく、食味が優れるため、夏秋期の生食用として利用できる。「デコルージュ」は四季成り性で、うどんこ病に強く、果実が硬く、果の揃い、光沢、果実外観が優れるため、夏秋期のケーキ用として利用できる。
[キーワード]
  イチゴ、四季成り性品種、夏秋どり、生食用、ケーキ用
[担当]東北農研・野菜花き部・野菜花き育種研究室
[連絡先]電話019-641-9244、電子メールpep@affrc.go.jp
[区分]共通基盤・総合研究、東北農業・野菜花き(野菜)、野菜茶業・野菜育種
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
端境期の7〜10月にはケーキ用イチゴが大量に輸入されており、品質の優る国内生産への要求が強い。また、生食用の高品質イチゴを夏秋期に生産できれば、贈答用などの新規需要が期待できる。四季成り性品種は、夏秋どり生産を容易にするが、育種の歴史が浅いため、品質が優れ生産者が自由に利用できる品種はごく少なく、夏秋期の生産拡大の阻害要因となっている。そこで、夏秋期に生食用、ケーキ用の高品質国内生産を可能とするため、果実品質が優れ、利用上の制限が少ない四季成り性イチゴ品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 「なつあかり」は、四季成り性で大果の「サマーベリー」を母親とし、一季成り性で食味が良く大果で硬い「北の輝」を父親として、「デコルージュ」は果実が硬く果実の揃いが優れる一季成り性の「Pajaro」を母親とし、四季成り性の「イチゴ盛岡26号」を父親として、それぞれ交配し、1994年に実生選抜をした。さらに選抜を進め、2001〜2003年に特性検定試験・系統適応性検定試験を実施した。その結果、「なつあかり」は、大果で、日持ち性が高く、特に食味が優れるため、生食用としての利用が可能な四季成り性新品種として、「デコルージュ」は、果実が硬く、果の揃い、果実外観が優れるため、ケーキ用の四季成り性新品種として有望と判定された(図1表1)。
2. 「なつあかり」は、草姿がやや立性で、草勢は強く、果数及び収量はやや少ないが、商品果率はやや高い(表2)。果実は大きく、円錐形で、やや軟らかく、果皮は赤色で、果実糖度、糖酸比が高く、食味、日持ち性や外観は優れる(表3)。
3. 「デコルージュ」は、草姿が立性で、草勢は弱く、うどんこ病に強い抵抗性を持ち、果数はやや少ないが、商品果率が高く、収量及び商品果収量は「サマーベリー」と同等である(表2)。果実は円錐形で硬く、果皮は濃赤色、そう果は表皮よりやや飛び出すものの、果実の光沢や果実の揃いは優れ、果実糖度、糖酸比は高く、食味、日持ち性や果実外観も優れる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 両品種とも、寒冷地や高冷地での栽培に適し、国産イチゴの端境期である夏秋期に生食用、ケーキ用として生産できる。
2. 「なつあかり」は、低温遭遇量が少ないとランナーの発生量が減るため、増殖用親株は低温に十分遭遇させる必要がある。
3. 「デコルージュ」は、草勢がやや弱いが、肥培管理により草勢を強くすることによって収量増加が見込まれる。また、花房当たりの着果数が少なく、果実の揃いが優れるので、摘果・摘花房は最小限にとどめる。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 四季成り性イチゴの育成
課題ID: 05-04-01-01-06-03
予算区分: 寒冷地イチゴ
研究期間: 1993∼2003年度
研究担当者: 沖村誠、松永啓、由比進、五十嵐勇、石井孝典、片岡園、川頭洋一、藤野雅丈
発表論文等: 沖村ら(2002) 園学雑 71(別2):368