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[背景・ねらい] |
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近年、葉菜類を始めとする野菜の品質・安全性の向上が求められている。特に、有害成分として知られる硝酸含量の低減は栽培上の課題となっている。安定的で低コストな高品質栽培技術を開発するため、中山間地域の気象資源である低温湧水などを利用できる地中冷却技術を用い、春〜夏作ハウス栽培ホウレンソウ、コマツナの品質成分含量への影響を検討した。 |
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[成果の内容・特徴] |
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1. |
地中冷却処理の方法:
ハウス内ベッド(幅1m)地下に水道配管用の硬質塩化ビニル管(VPW13)を50cm間隔で2列、深さ25cmで埋設し、冷水を常時流すことで地温を下げる。(図1、図2) |
2. |
東北農研圃場ハウス(盛岡市)で低温湧水の代わりに10℃の冷却水を用い栽培試験を行ったが、地中冷却区は対照区に比べ、ホウレンソウ、コマツナの硝酸含量が特に葉柄部において低い値になる(図3)。 |
3. |
地中冷却区と対照区で生育の差は小さく、水分含量、葉色(SPAD)、葉柄糖度(Brix)にも大きな差は見られない。アスコルビン酸(ビタミンC)含量は一部作期で地中冷却区の方が高くなるが、シュウ酸含量の差は小さい。(表1) |
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[成果の活用面・留意点] |
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1. |
中山間地等、低温湧水を夏期を通じて常時利用可能な圃場に適応できる。ただし極端に低温の湧水をそのまま用いると生育障害を起こす危険もあり、逆に湧水の温度が高いと効果が得られないおそれもあるので、栽培計画等について事前に検討が必要がある。 |
2. |
塩ビ管の埋設深さが25cm程度であれば耕起管理等作業に支障がなく、連作栽培も可能である。 |
3. |
地中冷却による効果は気温・地温とも高くなる8月以降に劣る場合がある。また冷水を途中で止めると硝酸含量が増加してしまうため、収穫時点まで冷水を流し続ける必要がある。 |
4. |
夏期高温対策の寒冷紗遮光で硝酸含量は増加するが、地中冷却処理を併用することで低減させることも可能である。 |
5. |
今回用いたホウレンソウの品種は晩抽銀河21、コマツナの品種は夏清水。他の品種、葉菜類にも応用可能である。 |
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