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[背景・ねらい] |
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いもち病は稲の重要病害であり、多発時には深刻な減収を被る。そのため、葉いもちを予防粒剤で防除する方法が広く普及しているが、比較的いもち病の流行リスクが低い地域では過剰防除となる嫌いがある。そのため、発生状況に応じて臨機散布が行える散布剤を的確に使用できれば、従来よりも農薬散布回数が削減可能でかつ、被害のリスクを最小限にできる。そこで、葉いもち病勢進展様相をシミュレートできるコンピュータモデルBLASTLを用いて、最小限の農薬散布で栽培者の許容できる発病水準を上回らないようにするシステムを開発する。 |
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[成果の内容・特徴] |
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1. |
本コンピュータシステムはWindows上で作動するアプリケーションソフトウェアである。過去の気象データおよびモデルのパラメータのデフォルト値は装備されている。 |
2. |
システムの使用者は過去の気象データを用いて流行様相を再現し、それを自分の圃場に当てはめ参考とし、システム上で任意の被害許容水準(EIL)を設定する(図1,図2)。 |
3. |
設定後は、栽培期間中に逐次病勢進展を予測すると、自動的にその水準を上回らないための農薬散布晩限が予測される(図2)。図2では予防剤の散布例であるが、治療剤の設定も可能である。 |
4. |
農薬散布晩限が数日後に迫った段階で初めて農薬散布の意思決定をする。 |
5. |
過去の気象データを用いて試算した例では、暦日散布や初発時期に依存して、薬剤散布時期を決定する方式よりも効果が高くかつ効率的となる可能性がある(表1)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
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1. |
本システムの対象は防除指導者あるい意思決定を行う栽培者である。使用にあたっては、担当・連絡先からソフトウェアを入手して指導を受ける必要がある。 |
2. |
本システムでは、個々の圃場条件の差異までは評価していないので、予測値は病勢進展の傾向(停滞時期、急増時期等)を半定量的に示しているので、「発病程度」としてある(図2)。そのため、当該圃場における従来のいもち病流行の観察と重ね合わせて予測値を理解する必要がある。 |
3. |
葉いもちは穂いもちの伝染源として減収には間接的にしか影響しないので、客観的な経済的被害許容水準設定は困難である。そのため、栽培者が経験とリスクに対する性向により主観的に被害許容水準を設定することになる。2年目以降は、前年までの経験を加えて、より合理的な被害許容水準設定が可能となり、栽培者の学習効果が期待できる。 |
4. |
表1「完全予察」は、現時点以降の気象が完全に予測可能な場合であり、現実にはあり得ない。また、条件によっては表1のように必ずしも本法が有利とは限らない。 |
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