| 1. |
クレームは生協での検品・納品後に発生する商品代金返還をともなう購買者からの苦情である。調査対象としたS事業連合(首都圏の地域生協の連合会)の場合、クレーム発生率(供給高に占めるクレームによる返金の割合)は産地を切り替える目安となっている。他生協も同様であり、産直関係の維持はクレーム発生抑制が鍵となる。また、クレームに関する情報の少なさは、交渉において不利な条件になりうる。 |
| 2. |
S事業連合の取引産地には、月例の産地会議(14産地+S事業連合)に参加する産地と、その他の産地(約160)がある(表2)。産地会議は産地側の主催により毎月開催され、前月の概況と各産地の作柄報告、価格確認と次月の企画の検討、全産地のクレームデータおよび関連情報の報告が行われる。クレームデータの分析手法は確立されていないが、会議参加産地は羅列されたデータの中から経験的に傾向を読み取り、改善に向けた取り組み(天候に留意した収穫、栽培管理や調製作業の工夫等)につなげている。生協担当者および産地会議参加産地への聞き取り調査において、これらの産地のクレーム発生率は年々減少しているとの回答を得ている。 |
| 3. |
産地会議参加産地は、全産地のクレームデータを入手できるが、その他の産地(遠隔地が多い)には、発生するたびに自産地のクレームデータのみが通知される(図1)。 |
| 4. |
産地会議参加産地(4産地)の聞き取り調査によれば、栽培方法は全ての流通チャネルに対して同じであるため、生協向けのクレーム発生抑制の努力は他の流通チャネルでの評価向上に結びついており、チャネルの多角化に貢献しているとのことである。一方、産地会議に参加していない岩手県A村の産地の聞き取り調査によれば、生協から示される自産地のクレームデータは件数が限られ、全体の傾向も不明なので発生抑制へ結びつける事が難しいとのことである。 |
| 5. |
今後生協産直に取り組む、もしくは産直関係を強化しようとする産地は、クレームに関する情報格差に留意し、生協にこのデータの開示を求めるなど、情報格差解消に努める必要がある。 |