研究所トップ研究成果情報平成15年度

生協産直における青果物クレームに関する産地間の情報格差


[要約]
  首都圏の生協と産直取引をしている産地にとって、消費者からのクレームの発生を抑制する努力が不可欠となっている。このクレーム発生状況の把握において、産地間に大きな情報格差がある。
[キーワード]
  クレーム、情報格差、産直関係強化
[担当]東北農研・総合研究部・総合研究第5チーム
[連絡先]電話019-643-3494、電子メール nonaka@affrc.go.jp
[区分]東北農業・経営
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  クレームは顧客管理および消費者ニーズ把握のために重要であるため、製造業では一般に体系的な管理の態勢がとられるが、農業分野ではその重要性が意識されない場合が多い。このため、産地間に情報格差や管理態勢の違いがあるかどうかも明らかにされていない。クレーム発生状況に関する情報は生協との交渉、他産地との競合関係を左右する要素でもあり、産地間の情報に関する条件の差を明らかにする必要がある。
[成果の内容・特徴]
 
1. クレームは生協での検品・納品後に発生する商品代金返還をともなう購買者からの苦情である。調査対象としたS事業連合(首都圏の地域生協の連合会)の場合、クレーム発生率(供給高に占めるクレームによる返金の割合)は産地を切り替える目安となっている。他生協も同様であり、産直関係の維持はクレーム発生抑制が鍵となる。また、クレームに関する情報の少なさは、交渉において不利な条件になりうる。
2. S事業連合の取引産地には、月例の産地会議(14産地+S事業連合)に参加する産地と、その他の産地(約160)がある(表2)。産地会議は産地側の主催により毎月開催され、前月の概況と各産地の作柄報告、価格確認と次月の企画の検討、全産地のクレームデータおよび関連情報の報告が行われる。クレームデータの分析手法は確立されていないが、会議参加産地は羅列されたデータの中から経験的に傾向を読み取り、改善に向けた取り組み(天候に留意した収穫、栽培管理や調製作業の工夫等)につなげている。生協担当者および産地会議参加産地への聞き取り調査において、これらの産地のクレーム発生率は年々減少しているとの回答を得ている。
3. 産地会議参加産地は、全産地のクレームデータを入手できるが、その他の産地(遠隔地が多い)には、発生するたびに自産地のクレームデータのみが通知される(図1)。
4. 産地会議参加産地(4産地)の聞き取り調査によれば、栽培方法は全ての流通チャネルに対して同じであるため、生協向けのクレーム発生抑制の努力は他の流通チャネルでの評価向上に結びついており、チャネルの多角化に貢献しているとのことである。一方、産地会議に参加していない岩手県A村の産地の聞き取り調査によれば、生協から示される自産地のクレームデータは件数が限られ、全体の傾向も不明なので発生抑制へ結びつける事が難しいとのことである。
5. 今後生協産直に取り組む、もしくは産直関係を強化しようとする産地は、クレームに関する情報格差に留意し、生協にこのデータの開示を求めるなど、情報格差解消に努める必要がある。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 生協以外の流通チャネルにおいても、情報収集とクレーム発生抑制は重要である。
2. クレームデータの分析手法開発の最新の成果に注意する必要がある。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 新規導入作物の流通チャネル設計と産地マーケティング支援システムの開発
課題ID: 05-01-07-*-03-03
予算区分: 寒冷気象利用
研究期間: 2001〜2003年度
研究担当者: 野中章久