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寒冷地夏秋どりイチゴ栽培における花芽分化に必要な短日処理期間


[要約]
  夏季冷涼な寒冷地において、イチゴ品種‘とちおとめ’および‘さちのか’では約30日間、‘北の輝’では約40〜45日間の短日処理によって花成を誘導できるので、温度制御の不要な低コスト花成促進法による一季成り性品種の夏秋イチゴ生産が可能となる。
[キーワード]
  イチゴ、一季成り性、夏秋どり、短日処理、花芽分化
[担当]東北農研・野菜花き部・野菜花き栽培研究室
[連絡先]電話 019-641-9246、電子メール yamasaki@affrc.go.jp
[区分]東北農業・野菜花き(野菜)、共通基盤・総合研究、野菜茶業・野菜栽培生理
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  夏秋期(7−10月)におけるイチゴの国内生産量は非常に少なく、品質の良い国産イチゴの増産が求められている。東北地域の夏季冷涼な気候を利用して、短日処理のみによる低コストな夏秋どり栽培が可能であることは、品種‘女峰’を用いて既に知られているが、最近の主力一季成り性品種の短日処理への適応性については明らかでなかった。そこで、‘とちおとめ’、‘さちのか’等の品種の花芽分化に要する短日処理期間について明らかにする。
[成果の内容・特徴]
 
1. 促成栽培用の早生品種‘さちのか’および‘とちおとめ’に8時間日長の短日処理を行った場合の花芽分化時期はほぼ‘女峰’と同等で、通常処理開始から約30日後に分化が確認できる(図12)。
2. 露地・半促成栽培用の休眠の深い品種‘北の輝’では、これらの早生品種より約10日程度花芽分化が遅れ、短日処理の日数は40〜45日程度となる(図12)。
3. 盛岡市において、図3に示すようなトンネルに遮光資材(ホワイトシルバー100等)を展張し、冷房装置等を伴わない簡易な短日処理施設で8時間日長(9:00〜17:00)の処理を行った場合、外気温との気温差はわずかである(図4)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 本試験における短日処理は、5月中旬〜下旬に2〜3葉齢のランナー苗を10.5cm径のポリポットで受け、ランナー切り離し後3〜5週間雨よけハウス内で育苗したのち、6月下旬〜7月上旬に開始している。この場合、9月下旬から収穫が始まる。
2. 短日下におけるイチゴの花芽分化は温度の影響を強く受ける。本試験は盛岡で行ったものであり、地域による温度差や気象の年次変動等により、分化までの処理期間は増減すると考えられる。例えば、2003年のように気温が低ければ、花芽分化は上記よりも数日早まる。よって、定植は必ず茎頂の検鏡によって花芽分化を確認した後に行うようにする。
3. 短日処理により夏秋どりした‘北の輝’の11月以降の収穫果実には、裂果や着色不良果の発生することがある。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 夏秋期生産安定のためのイチゴ等の発育生理の解明(2001〜2002)、短日下における花芽分化特性の解明(2003〜2007)
課題ID: 05-04-02-01-23-03
予算区分: 交付金、地域確立(寒冷地イチゴ)
研究期間: 2001〜2003年度
研究担当者: 山崎 篤、矢野孝喜、山田 修(岩手農研セ)、佐々木英和
発表論文等: 1) Yamasaki et al. (2003) Acta Horticulturae 626: 277-282.
2) 山田ら(2003) 東北農業研究.56:211-212.
3) 山崎(2003) 農業技術体系野菜編第3巻.p.基132の2-7.農文協.