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「下田不知」由来のダイズシストセンチュウ抵抗性選抜DNAマーカー


[要約]
  在来種「下田不知」由来のダイズシストセンチュウ抵抗性選抜DNAマーカーとして、連鎖群GのQTL近傍に座乗するSSRマーカーSatt309が有効である。
[キーワード]
  ダイズ、DNAマーカー、シストセンチュウ抵抗性、QTL、SSR
[担当]東北農研・水田利用部・大豆育種研究室
[連絡先]電話0187-75-1084、電子メールyottake@affrc.go.jp
[区分]東北農業・畑作物、作物・夏畑作物
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
  ダイズシストセンチュウ(以下、センチュウと略す)は大豆生産に深刻な被害を与える土壌害虫である。当研究室では東北地域に広く分布しているセンチュウのレース3に対して抵抗性の在来種「下田不知」を遺伝子源として利用し、抵抗性品種の育成を進めている。センチュウ抵抗性育種の効率化を図るため、従来の接種検定に代わる選抜方法としてDNAマーカー選抜が有望である。そこで、「下田不知」由来のセンチュウレース3抵抗性選抜DNAマーカーを開発する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 「下田不知」由来のセンチュウ抵抗性・強の「スズユタカ」と抵抗性・弱の「茨城豆7号」の交雑集団(0863F2)を用いて、DNAマーカーの1種類であるSSR(Single Sequence Repeat)マーカーを主体にした連鎖地図を作製し、QTL (Quantitative Trait Loci:量的形質遺伝子座)解析により、「スズユタカ」のセンチュウ抵抗性に関する3つのQTLを検出した(図1)。このうち寄与率(センチュウ抵抗性の表現型全分散に占めるQTLの表現型分散の割合)が最も大きいのは連鎖群GのQTL(31.2%)である(表1)。
2. 検出された3つのQTL近傍マーカーのうち、連鎖群GのSatt309のみ、マーカー型が感受性型およびヘテロ型の交雑後代において、全てセンチュウ抵抗性(表現型)が弱である(図2)。
3. 解析集団以外の「下田不知」由来センチュウ抵抗性分離集団についても同様の結果が得られたことから(図2)、Satt309を抵抗性判別のマーカーに選定する。
4. Satt309マーカーが感受性型およびヘテロ型の個体は、センチュウ抵抗性が弱であるため、本マーカー選抜により供試個体の約75%を廃棄できる。
5. 育成系譜上の母系ならびに父系の祖先に「下田不知」が存在するセンチュウ抵抗性・弱の品種の中には、Satt309マーカー型が抵抗性型の品種(おおすず、タチユタカ)も認められる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. Satt309により播種前に種子を用いて予備選抜を行うことで、接種検定への供試個体数を大幅に絞れることから、多くの組合せについて抵抗性選抜が可能になる。
2. 「おおすず」、「タチユタカ」のようなセンチュウ抵抗性・弱であるがSatt309マーカー抵抗性型の品種を片親に用いた交雑後代には、本マーカーによる選抜は適用できない。
3. SSRマーカーはCreganらにより開発されたものであり、マーカーに関する情報はSoyBase(http://129.186.26.94/ssr.html)で公開されている。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: ダイズのシスト線虫抵抗性(レース3)に関するDNAマーカーを利用した育種法の開発
課題ID: 05-02-06-*-09-03
予算区分: DNAマーカー
研究期間: 1999〜2003年度
研究担当者: 高田吉丈、河野雄飛、境哲文、島田信二、高橋浩司、島田尚典、湯本節三