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生分解性キレート剤によるカドミウム吸収促進に及ぼす土壌pHの影響と環境影響評価


[要約]
  生分解性キレート剤であるGLDAが土壌中のカドミウムを可溶化する効果は中性土壌で大きく、ソルガムによるカドミウム収奪量が増加する。しかし、酸性土壌ではGLDAの効果はない。また、添加方法によっては、カドミウムの溶脱による二次汚染が懸念される。
[キーワード]
  環境修復、汚染土壌、カドミウム、生分解性キレート剤、重金属、植物浄化、ソルガム
[担当]東北農研・水田利用部・水田土壌管理研究室
[連絡先]電話 0187-66-2775、電子メール nkato@affrc.go.jp
[区分]東北農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
  これまで、カドミウム汚染土壌に対しては客土による恒久的対策が講じられてきたが、広範囲に分布すると予想される低濃度汚染土壌については、植物による土壌浄化が安価で環境保全的な修復方法として推奨されている。この植物による浄化法の効率を向上させるために、生分解性キレート剤を利用して土壌中のカドミウムを可溶化し、植物による収奪量を増加させる試みがなされているが、生分解性キレート剤の効果を高める土壌条件やキレート剤の利用が環境へ及ぼす影響については明らかにされていない。そこで、生分解性キレート剤の効果と土壌特性の関係を解明するとともに、キレート剤添加によるカドミウム溶脱の可能性を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
 
1. 生分解性キレート剤であるLグルタミン酸2酢酸(以下、GLDAと略)のカドミウム可溶化効果は土壌pHの影響を強く受け、中性土壌では高く、酸性土壌では効果が極めて低い(図1)。
2. 酸性土壌ではGLDAを添加してもソルガムのカドミウム吸収は増加しないが、あらかじめ苦土石灰を施用して酸度矯正した土壌ではGLDAによるカドミウム吸収促進効果が認められる(表1)。
3. GLDAの添加直後に降雨がある場合やソルガム収穫後の裸地条件下では、GLDAの添加によって土壌浸透水中のカドミウム濃度が高まり、生分解性を有するGLDAでも添加方法によってはカドミウムの溶脱が懸念される(図2)。
4. 土壌の全炭素、全窒素、陽イオン交換容量や土壌の種類とGLDAのカドミウム可溶化効果との関係は判然としない(データ略)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. GLDAによるカドミウム吸収促進効果は、カドミウム汚染米の生産が懸念される地帯において、すでにカドミウム吸収を抑制する目的でアルカリ資材施用による酸度矯正が実施された土壌で期待される。
2. 二次汚染防止の観点から、GLDAの添加は生育前半や降雨の多い時期、および収穫直前を避ける。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: Cd可溶化資材を利用した植物のCd吸収促進技術の開発
課題ID: 05-02-10-01-05-03
予算区分: 新事業創出
研究期間: 2001〜2005年度
研究担当者: 加藤直人、住田弘一、西田瑞彦
発表論文等: 1)Kato and Sumida (2003) Abstracts, The 1st International symposium of Japan-Korea Research Cooperation, 46-49