 |
| [背景・ねらい] |
 |
近年、環境負荷低減を目的として化学農薬に代わる微生物防除資材の開発が行われ、その一部は既に生物農薬として登録され作物栽培に利用されている。しかし、これらの微生物防除資材の発病抑制は、獲得抵抗や競合によると説明されているが、詳細は不明である。この発病抑制機構を解明することにより、施用法の改善や防除効果の向上が期待できると考えられる。そこで、キャベツ萎黄病菌(Fusarium oxysporum
f.sp. conglutinans)Cong:1-1菌株の病原性欠損変異株を供試して、GFP(green fluorescence protein)遺伝子をキャベツ萎黄病菌あるいは病原性欠損変異株に組み込んで両者を識別することによりキャベツ根圏での動態を解析し、病原性欠損変異株による発病抑制の仕組みを検討する。 |
 |
| [成果の内容・特徴] |
| |
| 1. |
病原性欠損変異株REMI10をショ糖加用ジャガイモ煎汁液体培地で振とう培養して得られる芽胞状細胞(bud-cell)の懸濁液(1×107bud-cells/ml)に、キャベツ苗の根を浸漬して前接種し、その後キャベツ萎黄病菌を接種すると、前接種しない苗に比べて発病が顕著に抑制される(図1、図2)。 |
| 2. |
病原性欠損変異株REMI10にGFP遺伝子を導入したEGFP-REMI10は、キャベツ根に侵入するが、侵入速度はGFP遺伝子を導入した萎黄病菌EGFP-Cong:1-1よりも遅く、内皮までしか侵入しない(図3)。 |
| 3. |
上記2.と同様の方法でREMI10をキャベツ根に前接種すると、後から接種した病原菌EGFP-Cong:1-1のキャベツ根内部への侵入が阻害される(図4)。 |
|
 |
| [成果の活用面・留意点] |
| |
| 1. |
REMI法並びにGFP遺伝子導入法を発病抑制機構の解明に適用した本研究手法は、他の微生物資材における発病抑制機構の解明にも利用できる。 |
| 2. |
本研究により、前接種した病原性欠損変異株が植物体に僅かに侵入し、後から病原菌の侵入が阻害されていることが明らかになった。しかし、植物への抵抗性誘導も含めた発病抑制機構の更なる解明が必要である。 |
|