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| [背景・ねらい] |
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インパチエンスネクロティックスポットウイルス(INSV)は最近海外から侵入し、今後の被害地域の拡大とウイルス感染による花き類の減収が懸念されている。そこで、INSVが属するトスポウイルス属の媒介種として知られる国内生息のアザミウマ5種について、その媒介能力を比較することにより、わが国におけるINSVの媒介種を特定する。同時に、媒介能力が高い主要媒介アザミウマ種については、INSVの媒介能力に地域個体群間差が存在するか否かを明らかにし、今後の防除上の知見とする。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
INSVが属するトスポウイルス属のウイルスを媒介するアザミウマ種は国内では5種確認されている。このうちINSVの媒介種はFrankliniella属の2種(ミカンキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ)であり、Thrips属の3種(ダイズウスイロアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ、ネギアザミウマ)はいずれも非媒介種である(図1)。いずれの種も調査した2個体群間でINSVの媒介能力に差はない。 |
| 2. |
ヒラズハナアザミウマは本ウイルスの媒介種として初めて確認された種であるが、従来非媒介種と見なされていたようにその媒介能力は低く非効率的な媒介種である。一方、ミカンキイロアザミウマの媒介能力は極めて高く、国内の施設栽培におけるこの種の多発生を考慮に入れれば、本種が国内におけるINSVの主要媒介種である可能性が高い(図1)。 |
| 3. |
トマト黄化えそウイルス(TSWV)はINSVと同じトスポウイルス属のウイルスであり、このウイルスの媒介能力にはミカンキイロアザミウマの個体群間で違いがあることが知られている。しかしながら、TSWVの媒介能力が異なるミカンキイロアザミウマ6個体群のINSV媒介能力はいずれも高く、本種による両ウイルスの媒介能力は相関しないものと考えられる(図2)。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
INSVによる被害は施設栽培の花き植物(インパチエンス、ニューギニアインパチエンス、シクラメン、シネラリア、バーベナ、ダリア、トルコギキョウ等)で主に生じるため、施設内へのミカンキイロアザミウマの侵入及びウイルス感染苗の持ち込みをできるかぎり阻止する。 |
| 2. |
ミカンキイロアザミウマは花粉を摂食すると爆発的に増殖するため、施設及びその周辺に不要な花を栽培しない。 |
| 3. |
日本各地に分布するミカンキイロアザミウマは概してINSVの媒介能力が高いため、本ウイルスの侵入に関しては十分な警戒が必要である。 |
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